カスパル=フォン=ベルグリーズについて語りたい

このブログはファイアーエムブレム 風花雪月というゲームに登場するカスパル=フォン=ベルグリーズというキャラクターの限界オタクである一プレイヤーが、推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについてただ語るという、それ以上でもそれ以下でもないブログです。次第に他のことについても語るかも。

カスパルとエーデルガルトの関係性を探りたい

 カスパルが所属する黒鷲の学級は三つの学級の中でもとりわけ問題児の多い、級長であるエーデルガルトにとっての負担が重そうな学級である。そりゃあ青獅子、金鹿にもアクの強い生徒は多いが、こと黒鷲においては、まずフェルディナントがエーデルガルト本人に強い対抗心を持ちなにかと突っかかってくる。喧嘩っ早いカスパルはエーデルガルト直々にプレイヤーに「目を離さないで」と言われる有様であるし、リンハルトとベルナデッタは放っておくと講義に出るかさえ怪しい始末。頼れる腹心ヒューベルトは何かと隠し事も多く、その全てを信頼の名の元に無視出来る訳でもないようであるし、比較的まともなドロテアとペトラはそもそもの身分や立場の為に本来一番気にかけてやらないといけない立ち位置。ドゥドゥ―やアッシュらからあまり堅苦しく、対等ではない形で接されることをディミトリは苦く思っているが、対照的に黒鷲の面々は次期皇帝に対して遠慮という物が一切ない。級友たちに散々に振り回されるエーデルガルト、しかし最後には彼女の決断で黒鷲の皆が振り回し返される、というのは今思えばよくできた話である。

 さて、今回のテーマはこちら。

 

カスパルにとってエーデルガルトはどういう存在なのか?

 

 これまでもカスパルとエーデルガルトの関係については軽く触れてきたが、今回はこの二人の支援会話にフォーカスをあてて推し語りを展開していこうと思う。

 

 

「貴方の腕前は皆の中でも一、二を争うほどなのだから......」

「ほんとか!? エーデルガルトにそう言われると嬉しいな

 

 支援会話Cではカスパルが訓練をしているところへエーデルガルトが話しかける場面から始まる。「いるなら声かけろよ!」「声かけたわよ」なんてコント染みたやり取りを挟んで上記の台詞につながるのだが、この台詞からエーデルガルトがカスパルの実力を高く評価していることが分かる。武家の産まれで将来のビジョンが明確(武力一本で身をたてる)なカスパル設定上士官学校入学時点で他の生徒よりも高い戦闘力を有している(スタートラインが違う)ということだろう。じゃあなんで初期値低いん?

 一方でカスパルが「エーデルガルトに言われると」嬉しいと返していることから、彼も彼でやはりエーデルガルトは特別、という認識があるのだろう。カスパルは敬語が使えないが、一方で目上の人には「お前」ではなく「あんた」と呼ぶ、という謎の分別がある。エーデルガルトに対しても一貫して「あんた」呼びなのでこれでもそういった認識はあるのだ。

 訓練をやめられない理由を知ったエーデルガルトがカスパルに同情の念を示すと、一転カスパルは自分の立場に苦はないと返す。「何でも自分基準に考えるのがエーデルガルトの悪い所」と真正面からディスるのでエーデルガルトは喧嘩を売っているのかと憤るが、カスパルは「そんな気はないけど喧嘩ならバッチコイ!」の姿勢。カスパルは喧嘩に発展しても全然構わないので暴言で相手を怒らせるデメリットが薄い。タチ悪いな! 呆れたエーデルガルトがカスパルの元を去り、何とも言えない違和感がカスパルに残って支援Cは終わる。

 のちにエーデルガルトは戦争を引き起こすことになるが、カスパル含む黒鷲の級友達はその仲間としては数えられていない。にも拘わらず訓練のやりすぎを心配するなど級長として級友のことをよく見ている様子は、あとから思えば中々に感慨深いものである。聖廟での戦闘会話でも、彼女は出来れば黒鷲の仲間を失いたくはないと考えていた、「学校ごっこ」の中でも確かな友情はあったのだろう。

 

 

「おーい、急に話がデカくなったな......まあでもそう簡単には変わらないだろ?

「それはどうかしら......私は、優秀な者が出世し、人の上に立つ世の中を実現する

 

 支援Bはエーデルガルトがカスパルに「自分が家を継げることになったら嬉しいか」と尋ねるところから始まる。実力があっても家を継げない、そういった社会を当たり前のように受け入れるカスパルとそんな世界を受け入れないエーデルガルト在り方の違いが明確に描写される会話。エーデルガルトは実際に理想を行動に移し、実現してみせる、及び完遂直前まで迫る。この支援会話は二人の対比、というより寧ろスケールの違いを描いているとも言える。

 カスパルは家族思いの優しさもあるが、類まれなる努力の才能と根性を「自分が家を継げるような世界に変える」という方向性に向けようという発想がない、エーデルガルトからその可能性を示されても「自分には到底及ばない話だ」と諦めてしまっている(もしくは、やはり自分がどうこうするといったところへ考えが及ばないのだろう)。

 当然次期皇帝という立場にあり一定の権威を持つエーデルガルトとカスパルととでは話が変わってくるが......。

 カスパルはエーデルガルトの目指す世界での自分の可能性を聞いても自分のやることは変わらないと言い、「卒業したらやっぱりあんたの為に戦うしかない」と唐突に告げてこの支援は終わる。カスパルの方がモヤモヤしていた支援Cとは対照的に、すっきりと燃えているカスパルの側でエーデルガルトが心を乱される終わり方である。

 地味にこの支援ではエーデルガルトの思想、目的の一端が明かされているが、カスパルでなくても当然この後エーデルガルトが起こす事を想像することはできない。主人公の選択によってはカスパルはエーデルガルトと対立することになるが、エーデルガルトらが聖廟から逃げた後「俺らがあいつらを止めてやらねえと」と語ることから、彼の戦いの本質は「エーデルガルトが取り返しのつかないことをしでかす前に止めなければならない」という、「彼女のための戦い」に他ならない。一方で他の生徒たちがエーデルガルトに怒りを露にしたり未来を悲嘆している様子が描かれる第一部最後の散策会話ではカスパルは「親父は魔物よりやべぇから親父が攻めてきたらヤベェ!」とどうにもあっさりしたものである。

 

 一方で、主人公がエーデルガルトと共に戦うことを選んだルートでは支援Aが解放されるが......

 

「私はね、貴方のことをずっと犠牲者だと考えていたのよ」

 

 支援Aでエーデルガルトは今までカスパルのことを「自分が憎む社会の在り方から救うべき存在」と見ていた、という事実が明らかになる。エーデルガルトの思想は一貫して「優秀な者こそが世界を率いる存在であるべき」、同時にカスパルのように優れた実力と弛まぬ努力を続ける精神の持ち主が埋もれてしまうことを看過できなかったのだ。

 

「貴方は......自分で選んで、その生き方を貫いているのね

 

 同時にエーデルガルトは、ここでカスパルに対して抱いていた誤解に気づいたとも語る。幼い頃から悲惨な目に遭い続けた、荒んだ自分では到底想像できない程に純粋なその人間性何のしがらみにも囚われない男

 

「あんたのほうがすごい。どんなもの背負っても、下向かねえで、どんなしがらみだってぶっ壊していく

 

 一方でカスパルはエーデルガルトのことを上記のように表現する。しらがみに囚われないことと、しがらみをぶっ壊すこと、きっとその二つは似ているようで、大きな差異がある

 カスパルにとってのエーデルガルトはきっと、ともすれば彼の父親のように、敵わない存在なのだ。武の実力ではなく、人としての器、大事を為す意思の強さが。敵わない故に大きな存在で、親しく接しているように見えてどこか遠い存在、だからやはり彼はエーデルガルトのことを「あんた」と呼ぶのだろう。カスパルはこの支援で「あんたもあんたなりに悩んで、間違いに気づいたりするのか」とエーデルガルトを見直した、という。悩むことも間違えることも、それに気づいて過ちを認めることも、常人にとっては当たり前のこと(気づけないおバカ属性は別にして)、そんなことにも驚くほどにカスパルにとってのエーデルガルトは超常的な人だったのだ。

 

「改めて宣言するぜ、エーデルガルト。オレはあんたのために戦う。全力で喧嘩して、全力で敵をぶっ飛ばす! あんたはその後を、ついてきてくれよな!

「ええ、もちろんよ。私たちの未来......切り拓きなさいカスパル

 

 支援Aの最終盤のやり取り、全ての支援の中でも随一の爽やかさを持つ締めである。カスパルのテーマである「未来を切り拓く」、この言葉がエーデルガルトの口から発されるのがとてもエモい。エーデルガルトが歩む道は、あまりにも多くの犠牲が積み重なる、血に塗れた果てに終点を構える道。ともすればカスパルの正義と相反しかねない道、そのような道をカスパルが先陣を切り走る理由は、きっとこのルートでのカスパルがエーデルガルトに己の正義を託したからなのだろう。

 

 

二人の未来を切り拓いた先には......?

 

 支援Aを迎えた二人には、他の異性生徒同士の例に漏れずペアエンドがしっかり存在する。支援Bでエーデルガルトがその可能性を示したように、実際にカスパルは軍務卿に就任し、戦前と変わらずエーデルガルトの道を切り拓いているようだ。自由な身となって世界を放浪するイメージが強いカスパルだが、軍務卿として活躍する未来も彼にとって望み通りの未来の一つだったのだろう、この後日談ではエーデルガルトと共に生涯にわたってフォドラの統治に身を捧げたのだという。なお度々暴走して事件を起こしエーデルガルトを悩ませた、とも書いてあり実に彼らしい。その結果解決した問題も多く二人の公的な関係は悪くなかったとも書かれているが......ほんとかなぁ。

 そしてなんと、この二人しっかり夫婦となっていることが名言されている。皇帝と軍務卿の夫婦というのもなかなか凄い話である。二人の私的な関係は公的な物以上に多くの問題を抱えた、と書かれてあり大爆笑物であるカスパルが後日談の軍務卿や旅で問題を起こしまくることは散々書かれてるんだ、それ以上の私的な問題!? 何があったの!?

 そもそもこの二人の支援会話それっぽい様子は全く見られない。カスパルのペアエンド相手ではベルナデッタ、ドロテア、ペトラ、ヒルダと(いずれも女子側からではあるが)恋愛を想起させるアプローチが支援会話内で展開されているのに、この二人にはそれが一切ない。アネット、カトリーヌ、おまけに結婚が名言されていないシャミアとの支援会話でもそういう感じに見えなくもないやり取り(こちらはいずれもカスパルからの矢印も見ようと思えば見れる)が含まれているのに、カスパルエーデルガルト支援では......うーん......見ようと思っても......無く......ない......?

 そんな事情もあってか私はどうにも二人が恋に落ちる流れが全く持って想像できなかったりする。しかし黒鷲、覇道ルートでしか成立しないこのペアエンドは、前提として覇道ルートだけの特徴、「空白の五年間を共に戦っていた」という事実を鑑みることができる。カスパルは第二部開始直後「先生がいないことでエーデルガルトは実に荒れていた」とからかうような口ぶりで教えてくれるし、敵対ルートでは主人公に「先生とエーデルガルトは分かりあえると思っていた」と語るなど、エーデルガルトに対する言及と共に「エーデルガルトが慕う先生に対する嫉妬」みたいなものを見ることが......何? 妄想が過ぎる? うるせえ!

 他の例を見るにカスパルの恋愛は大抵相手側からのアプローチで発展していると考えるのが自然である。エーデルガルトにとってのカスパルは「自分が想像もしなかった純粋な存在」でありカスパルのような人間像は自分が実現しようとする世界の中で輝くべき理想の存在である(理想と呼ぶには少々おつむが足りない気もするが)。順調に支援レベルを上げていれば第二部開始時点で支援Aを開放できる、カスパルに対する誤解を正すのはこの空白の五年間でのことだったろうから、師を失い不安定な彼女にとってカスパル心の支えだったのかもしれないあと手のかかる問題児の「あんたのために戦う!」って言葉にあっさり心を持っていかれたチョロい皇帝とかでも可愛いよね。

 

 

 今回は一本丸々カスパルとエーデルガルトに焦点をあてて後半になるほど妄想過多でお送りした。もともとは書くつもりのないテーマであったので、既に一度触れた部分の繰り返しになるところも多くあったと思うが、次回以降も数回、似たようなテーマで書くことになると思う、ご了承願いたい。