カスパル=フォン=ベルグリーズについて語りたい

このブログはファイアーエムブレム 風花雪月というゲームに登場するカスパル=フォン=ベルグリーズというキャラクターの限界オタクである一プレイヤーが、推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについてただ語るという、それ以上でもそれ以下でもないブログです。次第に他のことについても語るかも。

カスパルの抱える陰、彼にとってのダグザ・ブリギット戦役とは

 本ブログでカスパルを語り始めて今日で一週間となる。元より長期的に続ける予定のブログではないのだが、カスパルを推すうえで語りたいテーマはまだ数個残ってもいるので、これまでお付き合いいただいた方々はこれからも是非ともお越しいただけるとありがたい。このここまでで本ブログのPV数はおよそ200を数えるほどになった。とても沢山の数字だと思う。継続して来てくださっている方や、記事に反応をくださる方もいて、ただただ感謝するばかりだ。

 私はカスパルが好きだ。そして、カスパルがまた他の方から愛されている様を見るのが好きだ。本ブログを読んでくださっている方々の中で「私はこの部分はこう思うのですがポン酢さんはどう思いますか」などの質問、「私はこの部分はこう思っています!」という持論、カスパルについて聞きたいこと、語りたいこと、ここめちゃくちゃ分かる、それは違うんじゃないか、カスパルっていいよね、その他色々......何かあればぜひこのブログのコメント欄だとかTwitterの方だとかにコメントをくださると嬉しい。Twitterの方には一応マシュマロもある。カスパルの事を語る怪文を匿名で送ってくれてもいい。なんなら私の見えないところでカスパル語りを展開してくれてもいい。カスパルの輪が少しでも広がることは、私の心からの幸せである。

 

 

避けては通れないペトラ支援と避けないほうがいいシャミア支援

 

 さて、前置きが長くなったがそろそろ本題に入ろうと思う。

 基本的に明るいキャラクターで、その言動一つ一つでプレイヤーや作中の仲間達に笑顔を与えてくれるカスパルだが、そんな彼も大いに悩み、暗い表情を見せることがある。以前書いた主人公との支援の流れも勿論そうだが、彼のそういった側面が最も描写されているのはペトラとの支援だろう。

 ペトラ=マクネアリーは黒鷲の学級の一員であり、ブリギット王の孫娘でもある。フォドラ西方に位置するブリギット諸島はかつて「ダグザ=ブリギット戦役」で帝国と戦い、これに敗退したことで本編の時代には帝国に従属している。その証こそがペトラ、言わば彼女は人質でもあったのだ。

 しかしペトラはエーデルガルトの支えもあって黒鷲の学級にもしっかり馴染み、伸び伸びと学生生活を送っている。癖のある生徒が多い黒鷲の学級の良心でもあり、真面目で勤勉な彼女は仲間からも高く評価されている。

 

「何で、オレと普通に話せるんだ? オレは、仇の息子なんだぜ!?」

 

 しかしカスパルだけは、彼女と親しく話すことができずにいた。

 カスパル・ペトラの支援Cで明かされる衝撃の因縁、先の「ダグザ=ブリギット戦役」でペトラは自分の父を失い、その時に帝国軍を率いていたのがカスパルの父であるベルグリーズ卿その人だった。

 正確にいえば、カスパルがこの事実を知ったのは「ついこの前」だそうなので、それまでは普通に仲良くしていたのかもしれない。この支援でのカスパルは、「元気に訓練を始めようとしたカスパルが、訓練場にペトラの姿しかないのに気づいて声のトーンが下がる」「ペトラに話しかけられたカスパルの言葉の歯切れが悪くどこか戸惑いが感じられる」「一度は彼女に言おうとした言葉を飲み込んで『何でもない』と言い張る」など、彼らしくない言動が大いに出てくる。この支援が解禁される頃には、プレイヤーはようやくカスパルの性格を掴み始めたところだろう、彼の意外な一面に戸惑いを覚える先生は多かったのではないだろうか? 私は一周目を黒鷲でプレイし、カスパル支援会話の中では割と序盤で開かれたこの支援で初めてカスパル=フォン=ベルグリーズという存在を強く意識するようになった。

 

 支援Bでもカスパルの態度は相変わらずで、彼に歩み寄ろうとするペトラに「親の仇とよく一緒にいられるな!」とまで言ってしまう。「逆の立場だったらオレは絶対許せないのにどうしてお前は......」、まるで自分を憎んでくれと請うようなカスパルにペトラは「親同士の因縁は子には関係ない」「ここで自分がカスパルを憎むと、互いの子孫は永遠に殺しあうことになる」と憎しみを否定しカスパルを諭す。

 カスパルはそれでも簡単に割り切ることができずに、ペトラが去った後も一人思い悩む。学生時代のカスパル特有の未熟さが描かれているのがこの支援で、同時にペトラが高潔で優れた人格者であることが窺える支援でもある。割り切れない加害者の息子と無かったことにしたい被害者の娘、戦争でのこととはいえカスパルにとっては非常に難しい問題なのだろう。

 

 同様の問題が描かれているのがシャミアとの支援である。シャミアはダグザの出、ダグザもまたブリギットと共同戦役を組み帝国に負けた身である。シャミアの場合は、彼女自身もその戦争に参加している。カスパルは「ダグザ人であるシャミアとも、彼女が帝国を嫌わないと言うのであればわだかまりなく仲良くできる」と支援Cの段階では言っていたが、彼女が正に戦争の当事者であると知ってその態度は一変する。

 

「オレ、あんたは戦ってねえと思ってたんだ! ダグザと帝国は戦ったけど、オレ達には関係ねえ、だから仲良くできるって......」

 

 支援B、らしくない歯切れの悪さなどから異変をすぐに感づかれ、シャミアに問い詰められたカスパルは自身の動揺の訳をシャミアに話す。親のやったことを自分とは無関係だと思えない点もここで再び描かれ、必要以上に親の行いを背負ってしまっているのがカスパルの陰だということが明確になる。シャミアはというと淡白なもので、「奪った命を生き返らせること以外に責任の取り方などないのだから、わだかまりなど捨てて自分と付き合って見せろ」と言い放つ。多少態度や立場は違えど、ペトラとシャミアの主張は同じ。カスパルは大いに悩むことになる。

 

 

悩みの末カスパルが出す答えは......

 

 さて、ペトラ支援の前に先にシャミア支援の結末について触れていこう。

 シャミアとの支援は上記のCとBを経て、更にB+、Aと二段階の支援が残されている。支援B+では、カスパルがシャミアを庇い瀕死の重傷を負うところから始まるのだが......

 

「確かにオレ、あんたに負い目を感じてたよ。けど、今回のこれは関係ねえ」

 

 代わりに命を賭すことで責任を取ろうとしたことを糾弾するシャミアに、カスパルは「ただ勝手に体が動いてしまっただけだ」と返す。カスパルの性格上その言葉に嘘はない、シャミアは年長者の立場からやはりカスパルの軽率さを注意するが、同時に助けられた事への感謝と、支援Bでの自分の言葉を「意地悪だった」と謝罪の言葉を送った。この支援でシャミアは「私を助けたかったら自分の身も守りながらにしろ」とカスパルに言うのだが、カスパルが正にそれを実現するのが支援Aだ。

 

「今度シャミアさんが危なくなったら、俺も無傷で華麗に助けてやるぜって!」

 

 シャミアから「腕を上げた」と素直に褒められるようになるまでに成長したカスパル、すました顔で冗談のようなことを言ったり的確に賞賛してくるシャミアに振り回されるという珍しいカスパルが見られるのがこの支援A。カスパル持ち前の観察眼でシャミアの動きをよく見て、よく読んで、邪魔にならないように......と努力した結果、互いに安心して背中を任せられる関係になっていたのだ。ついでにシャミアの考えていることまで分かるようになったというカスパルにシャミアは「なら私が君について思っていることを当ててみせろ」と告げ......

 

「オレのこと、仲間として頼もしく思ってて、ずっと一緒に戦っていきたい戦友で......出自なんか関係なく、一生の絆が結ばれた、心で通じ合ってる二人っつーか......」

 

「あっ、これじゃ、全部オレの願望じゃん!」

 

 プロポーズかな?

 少々論理が飛躍した。しかしカスパルはその後この発言を「凄いこっ恥ずかしい」と認識しており、恥ずかしがっているのでやっぱりラブみを感じずにはいられないのが恋愛脳プレイヤーの性である。ドロテア支援の「お姉ちゃん」は、恥ずかしいと思いながら恥ずかしいことを口にしていた。こちらはうっかり言ってしまった言葉が恥ずかしいものだった。似ているようで性質は全然違うでもどっちも良い!!

 一方でシャミアもこの恥ずかしい発言を前にして「だが、あながち外れでもないぞ」と告げる。デレの破壊力が凄い。シャミアはツンデレ、いやクーデレ? とにかく普段のすました雰囲気のままから放たれるデレの威力も魅力のキャラクター、この表情一つ変えず放たれるデレは「このシャミアがスゴい!グランプリ」上位入賞も狙えるのでは?

 後日談では二人は傭兵団を結成、正義の傭兵団として圧倒的な実力をフォドラ全土に響かせたという。「カスパル、旅に出る」シリーズと同じように、カスパルが騒ぎを起こし、シャミアがそれを収め、その場の皆が笑顔になるという展開がここでも描かれ、結婚の有無は明らかではないがまあそんなことはどうでもよく二人はカスパルの願望通り良き相棒となれたのだろう。

 

 

 カスパル答えだしてなくない!?

 この支援では結局カスパルが悩んだその先の答えが描かれていないのである。負い目とは関係なしに勝手に体が動き、それを経てシャミアがカスパルへの態度を軟化。カスパルカスパルでシャミアの言葉を愚直に受け止め成長、晴れて二人は良き相棒に、という流れ。B+からAの段階でカスパル「負い目」などという余計なことを考えている場合ではなくなった、そんなことに頭を割いていては強くなれないので忘れてしまったのだろう。そして、きっとそれが良かったのだ

 シャミアからすれば、カスパル初めから悩む必要などなかった答えを出す必要などない、というのがこの支援の正答だったのだ。

 

 ならペトラとの支援では......?

 

 

「あなた、父の仇、その子供。だから......殺します」

 

 ペトラとの支援A、カスパルはぎこちないながらもペトラに自ら話しかけ、世間話を持ち掛ける。支援Aが解放されるのは第二部、共に死線をくぐり、ある程度は仲も良くなった証だろうか。

 しかしペトラはカスパルに剣を向ける。

 嘘をつけないカスパルは、ペトラの「気にしない」という言葉を信じ切っていたのだろうか、しかしペトラはカスパルに語る。カスパル楽天的なのはおかしいと。お前の父に自分の父は殺されたのに、憎さがない訳がないだろうと。この剣があなたを貫く、それがわたしの願いの片方だと。

 

「願い、もう一つ、あります」

「共に、戦う、生き延びる、願いです」

 

 しかしペトラは、同時にカスパル仲間として好いてしまってもいたベルグリーズ卿を誇りに思い笑うカスパルを許せないが、誰よりも努力するカスパルを殺すこともまたできないと......

 

オレを殺さないで良かったって、思わせる。絶対だ。誓うぜ、ペトラ」

 

 彼女の愛憎入り混じった言葉を受け、カスパルは「その剣が今オレを刺さないのなら、オレと共に生きる願いの方が大きいと信じていいんだよな」と聞く。そしてペトラを賞賛し、誓いを立てるのだった。逆の立場ならオレはきっと許せないのに、ペトラは凄い奴だと。その言葉に、自分も応えると。

 

「これから、すべて、伝えます。悲しみ、憎しみ、喜び、愛おしさ、すべて」

 

 ペトラはカスパルの誓いに喜び、今まで心の壁を作っていたのは自分の方だったと語る。二人は本音で語らいあうことを誓い、この支援は終わりを迎える。

 

 扱うテーマが重いだけあって、この支援はカスパル推しの身から見てもカスパルの支援の中ではトップクラスの内容だと思う。何より、初見時には「今までとは一転してペトラが憎しみを露にする」というシーンで度肝を抜かれたのだ。

 カスパルは、父のことを深く敬愛している。「親子の絆なしに恐ろしい」と言いつつ、父を失った時はやはり落ち込みを見せるし、必要以上に父の罪を背負ってしまうのも、父への憧れや絆、誇りから来るものだと思う(敢えて「罪」と表現するが、戦争の結果による生死自体が仕方がないことだし、カスパル本人も父の行いを罪ではないと理解しているに違いない)。そんな彼が父の事を誇って笑うのは、当然ペトラにとっては複雑だ。許せない思いと同時に抱いてしまった敬慕、ペトラの混乱が遂に表に出てしまうのが支援A。彼女が何を思って剣と思いを突き付けたのかは分からない、しかし彼女が思いを晒さなければ二人の間に壁があり続けたのは明白なこ

 

 カスパル答えだしてねぇな!!!!!

 

いや、まあ、そうなのだ。カスパル本人にはどうしようもないことなのであるこの壁はカスパルを加害者、ペトラを被害者と敢えて表現して言うならば、結局この関係がどう転ぶかも被害者次第なわけで、加害者が被害者に何をしても被害者の気持ちがついてこなければ意味がない。ペトラが本当に憎しみなどもっていなかったのだとしても、もっと直接的に本音でぶつからなければカスパルは永遠に負い目を感じてしまうし、それに、やっぱり何の憎しみもないなんてことは、難しい。許さないならば許さないでいい、ペトラにしてもシャミアにしても、カスパルは相手の側からアクションが無ければ身動きを取れないのは仕方がない。

 一応悩んで自分で答えを出せた主人公との支援の違いは、相手在りきだと言うところ。大大と「答えだしてない」と書いたが、この二件においてカスパルが出した答えを敢えて明確にするならば「ペトラの思いに応える」「シャミアの思いに応える」といった感じになるのだろう。

 加害者とは書きながら、どうしたってカスパル本人は何もしていない。まだ本人に非があれば多少話は簡単だったとも思う。

 

 

カスパル・ペトラ支援のあれこれ

 

 初めて見た時は冗談抜きで泣いてしまった、今でも見るたび目が潤むペトラとの支援。感動という面においては上記の通りトップクラスの名作だと私は思っている。そもそもが、この「親世代の因縁」という設定はある意味で劇物なのだ。支援会話の感動指数をランキングで争うならドーピング違反と呼べるような、とんでもない劇物。代償にこの二人は「士官学校時代ほぼ丸々、というか五年後までずっと仲がぎこちないまま」ということになる。

 一部と二部で五年間空くというシステムの残酷なところで、例えばアネットメルセデスの青獅子仲良しガールズは支援Bで喧嘩をしてしまい、そのあと二人を食事に誘っても気まずそうな会話が展開される。仲直りする支援Aが解放されるのは五年後の第二部だ。こんなひどい話があるか一応支援CやBは一部でも二部でも解放可能なものがあったりでこういう悲劇を幾分和らげることができたりもするが、それはそれこれはこれである。そしてその仕様のせいで五年後173㎝カスパルがお姉ちゃん呼びを強要される喜劇が発生したりもする。カスパルとペトラの支援に関しても同じで、二人の心の壁が取り除かれるのはどうあがいても五年後なのである。フェルディナント、ドロテアの関係は当初はドロテアが一方的にフェルディナントを嫌っているが、支援をこなせば一応舞踏会で「フェル君で妥協」する程度には関係も軟化する。同様にコンスタンツェがフェルディナントに激しい敵意をみせる両名の関係においてもフェル君ばっかりだな支援Bの開放が確か一部のラストであったため、ギリギリ多少軟化はする。だがカスパルとペトラの支援はAまでいってようやく心の壁崩壊、同じ学級なのにあまりに悲しい。ここに戦闘会話があってペトラがカスパルに憎悪をぶつけていたりしたらもう心が折れていた、本当になくてよかった。私は見たかったとか言わないの、ペトラはきっと戦場に私情を挟まない子だよ。

 また、割かし重要な設定にも思えるこの因縁の話、しかし二人の支援を見なければまず気づかないだろう程に表には出てこない設定でもある。初めに黒鷲以外を選んでなまじかじる程度に二人のことを知っていたプレイヤーは二周目以降で黒鷲をプレイしたりしてさぞ驚いたのでは? カスパルスキーとしてはカスパルの魅力を大いに掘ってくれる名支援であると思うので、知らない人には是非とも見てもらいたいものである。その割には全部ここでネタバレしちゃったよね。

 

 最後に、二人のペアエンドの後日談では、ペトラが祖父から王位を継ぎブリギットの帝国への従属状態の解消を宣言し、フォドラやダグザとの友好的な交流に尽力したと書かれている。その大いなる助けとなったのがカスパルその人であり、彼はなんとペトラと結婚したと記されているのだ。現地の民は当然反発するが、彼の真摯な姿勢と楽しそうなペトラの姿を見て徐々に態度を軟化させたのだという。ここでの「共に躍動する女王の楽しそうな姿」という文がエモいポイントであり、(座学はともかく)共に武において真面目で真剣な姿勢を持つ二人は、親のことが無ければきっとすぐに仲良くなっていたのだろうと思わせる。

 にしても結婚とは中々に凄い。先ほどは茶化すまいと記さなかったが......

 

「これから、すべて、伝えます。悲しみ、憎しみ、喜び、愛おしさ、すべて」

 

 ラブい。

 なんとこの時点でペトラはカスパル恋愛的な意味で惚れてしまっている(可能性がある)。そもそもペトラは支援会話の段階で相手への好意を明確にする場面がそれなりにあるのだ。

 ヒューベルトとの支援では彼に聞こえない様に「いずれエーデルガルトではなく自分を選ばせ、ついてきてもらう」と決意を露にしており、アッシュとの支援では本人に「戦争が終わったら共にブリギットに行こう! え? 騎士になりたい? じゃあブリギットに騎士団作るよ! 私はブリギットの王! アッシュは私を守る騎士! あなたの夢も叶うし問題ないでしょ?」と押し切ってしまう。この支援でのアグレッシブさは本当に凄い、必見。クロードの支援では「誰かは秘密だけど自分に相応しい婿見つけたよ! その人しかありえない! だから断られて逃げられたら縛り上げて連れて帰るよ!」......お国柄かなぁ? その秘密の相手が断る気がなさそうで本当に幸いである。

 話を戻そう、この最後の言葉にわざわざ「愛おしさ」というフレーズを入れているのは恋慕を匂わせる為なのは明白。兄さん、ペトラは親父の仇の息子に恋をしているよ。ブリギットに渡ったカスパルにはそれはそれは数多の苦難が待っているだろうが、遂にはそれを乗り越える二人......そんな絵に思いを馳せるのも悪くないだろう。