カスパル=フォン=ベルグリーズについて語りたい

このブログはファイアーエムブレム 風花雪月というゲームに登場するカスパル=フォン=ベルグリーズというキャラクターの限界オタクである一プレイヤーが、推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについてただ語るという、それ以上でもそれ以下でもないブログです。次第に他のことについても語るかも。

唯一無二の幼馴染、リンハルトとカスパル

 カスパルは、正義感が強い。カスパルは、貴族の次男坊である。いくつか挙げられるカスパルの構成要素、その中でも一二を争うほどに重要なのは、やはり幼馴染の存在。リンハルト=フォン=ヘヴリングはカスパルの幼馴染である。寝る事と紋章学が好きで、争うことが嫌い、汗にまみれた努力が嫌い、そもそも血が嫌いという男。どこかしらカスパル正反対に思える一方で、自由が好きで、マイペース、「貴族らしからぬ貴族」という点では彼と似ているとも思える男である。

 しかしリンハルト、カスパルとの喧嘩や鍛錬にはほとんど付き合えないしいつだって眠っていたいリンハルトにとって騒がしいカスパルは邪魔なはず。彼の趣味は大体一人で完結するし、釣り位なら一緒に出来るかもしれないが、カスパルが釣りを嫌わずとも彼の釣りの腕前がいいわけがない(騒いで魚を散らすに違いない)ので釣果を求めるなら一緒でないほうがいい。リンハルトが釣りに釣果を求めないならそれはそれでなおさら近くにカスパルを置かないほうがいい。おまけにカスパルは紋章を持たないためリンハルトの研究対象にもなれない。

 リンハルトに、カスパルは必要ないカスパルにもリンハルトは必要ない。それが二人を客観的に見た私の結論である。

 しかし二人は親友である。これは揺るぎない事実だ。

 

黒鷲二人の不思議な関係について語りたい

 

 これをテーマに、本日も推し語りをしていこうと思う。

 

 

 リンハルトとカスパルの趣味や性格はどこまでも交わらない。例えば二人が士官学校で初めて出会ったなら、そう仲良くなることもなかったと思うのだ。だから二人は幼馴染なのだ。

 カスパルが軍務卿の息子なら、リンハルトは内務卿の息子。二人は昔から家族ぐるみの仲だったようだ。しかし二人の父の仲は険悪、争いや政治が嫌いなリンハルトはその様を見て辟易としていたに違いない(もしくは二人の様子から政治などを嫌うようになったのかもしれない)。なにはともあれ、息子の二人はたったの一度の喧嘩もない。赤の他人から仲良くなることのない二人でも、一緒に居てみれば案外悪くなかったのかもしれない。お互い自由を好み、他者から干渉されることを嫌う方だカスパルは人の性格をそのまま受け入れるタイプであるし、リンハルトはめんどくさがりなのでわざわざカスパルの欠点をしつこく追及しない。そしてカスパルはウソを嫌い、リンハルトはウソをつかない。多少の騒がしさに目を瞑れば、カスパルの傍というのはリンハルトにとって案外悪くない環境だったのかもしれない。

 二人の腐れ縁は成長しても続く。二人は同じ年に士官学校に入学した。性格こそ違えど、二人ともなかなかの問題児だ、エーデルガルトも彼らの扱いに頭を悩ませたに違いない。黒鷲の学級を選ぶと、挿入されるムービーの至る所で幼馴染である彼らの年季の入ったクスリと笑えるやり取りが楽しめる。各種課題や食事でも専用会話が用意されており、そのどれもが、特別ではないが「彼ららしい」と思わせる名文だ。

 そんな二人の支援会話も、やはり彼ららしさに溢れている。話をしている途中でめんどくさくなって話すことをやめてしまうリンハルト、相手の話を聞かずにこうと決めたらこう! と譲らないカスパル、支援Bでようやくリンハルトの話に耳を傾けるようになるが、今度はリンハルトを強引に鍛錬に付き合わせてしまう。結局リンハルトは逃げてしまうが、普段の彼を思えば少しは付き合ってるだけ凄い。

 支援Aでは陰ながらカスパルの挑戦を見守り、彼の勝利を喜ぶリンハルトや、カスパルにストレートに褒められて照れを見せるSレアリンハルトが見られる。リンハルトが照れを見せることは滅多にない(寧ろ恥ずかしげもなくとんでもない言葉を吐いて相手を照れさせたり困惑させるのはリンハルトの常である)。リンハルトカップtier1カスパル爆誕である。以前も軽く触れたが、支援の最後ではカスパルがリンハルトに「一生争わない約束」を求め、リンハルトは代わりに「共に生き残る約束」なら交わしてもいいと言う。後日談ではいずれのルートでも二人共にフォドラ中、世界中を旅することになる。めんどくさがりでベルナデッタほどではないが出不精のイメージのあるリンハルトが旅に出るという後日談は中々に衝撃的である。

 

 

最初で最後の喧嘩

 

 しかし、支援Aが成立するのは二部になってから、カスパルとリンハルトが道を違った場合、二人は争うことになってしまう。風花雪月がプレイヤーの心を惹きつけてやまない理由でもあり、最も残酷な仕様、「縁深い者同士の対決会話」がカスパル、リンハルト間にも用意されているのだ。二人について語るのであれば、この会話は外せない。寧ろ最重要と言って過言ではない。

 帝国に与するシルヴァンにイングリットは激情をぶつける。帝国につきながら友と戦う覚悟を固められないラファエルをイグナーツは敵の立場から叱咤する。ヒルダはマリアンヌの決断を優しく受け入れる。アネットとメルセデスは互いに許しを請わず、断腸の思いで刃を向ける。

 この戦闘会話には、それぞれの在り方が色濃く表れる。涙なしでは見れない物も多いだろう。

 では、カスパルとリンハルトの戦闘会話とは一体どういう内容なのか。

 

「リンハルト! お前とは、敵味方になっちまったな......」

「ああ、そうだね。あまりの残念さに涙が出てくるよ」

 

 あっさりしたものである。

 カスパルの第一声がもう、焦りや怒りなどの感情とは無縁である。語尾にほんの少しの寂しさを感じさせはする......これは、明らかにいずれくる幼馴染との敵対を覚悟していた武人の台詞である。

 それに答えるリンハルトはなおの事さっぱりとしたものである。カスパル以上に感情の揺らぎが一切見えない、泣いたっておかしくない状況であるのに言葉通りに涙を流す彼が全く持って想像できない。

 

カスパル、知ってるかな? 僕らが喧嘩するのは、これが初めてさ」

「! そういや、そうかもなぁ。最初で、最後の、喧嘩、か」

 

 そうしてリンハルトは、あくまでも冷静にカスパルに語り掛ける。カスパルはハッとして、やはりリンハルトとは違い言葉に寂しさをにじませる。しかしリンハルトが「初めて」と言葉を留めるのに対してカスパルの方は明確に「最後」と言い切ってしまう

 支援会話でも、リンハルトはカスパルに「生き残ること」を約束する。カスパル以外に対しても、リンハルトは「生きていてほしい」のである。戦場で命を散らすことを理解ができないことだと語り、人の死を尊ぶこともリンハルトは嫌う。きっとリンハルトは、この戦の場においてもカスパルに死んでほしくはないのだろう。

 しかしカスパルはどこまでも武人で、この「喧嘩」で自分かリンハルトのどちらかの命が尽きるのだと覚悟を決めてしまっている。そうして始まる戦いは、カスパルが心を躍らせるような「喧嘩」とは呼べないものだったろう。勝者となるのがどちらか、それはプレイヤーの選択次第。どちらにせよ、この瞬間に二人の腐れ縁は終焉を迎えるのだ。

 二人の性格はやはりどこまでも交らない。互いの決断を尊重する二人だから、恨み言の一つもない。お互いのことをよく知る二人はこの結末を「仕方がない事」だと割り切れてしまうから、必要以上に悲嘆することもない。このあっさりとした二人の戦闘会話は、どこまでも二人の在り方を表している。他の組み合わせではそうそうない、唯一無二の味わいを得られるだろう。

 

リンハルトがカスパルへ向ける思い

 

 先述の通り、後日談では二人がフォドラや世界を股にかけて旅をしたと記されている。リンハルトが自ら旅に出よう、などと言い出すとは考えづらい、きっとカスパルの旅に彼がついていく形で、若しくはカスパルの誘いに彼が乗る形で旅は始まったのだろう。

 敵対する道を二人が歩んだ時、リンハルトはカスパルに「これが初めての喧嘩」だと告げる。リンハルトにとって、自身が彼の喧嘩に付き合えないことがコンプレックスだったのかもしれない。リンハルトは、カスパルに何かを与えることができない。カスパルは、ふとした拍子にどこかへ飛んで行ってしまうような嵐のような男である。その手を繋ぎ留めておけないことは、他でもないリンハルトが一番分かっているのだろう。

 カスパルからリンハルトへ向ける感情の、何倍も、リンハルトからカスパルへ向ける感情は重いものだと私は思っている。積極的に他者と関わることのない、不躾な言葉で近づくものを傷つけてしまうリンハルトにとってカスパルの存在はきっと貴重だったから。切っても切れない腐れ縁は、その実いつでも切ることができた縁でもあったはず。それでも斬れない絆になるまで保ち続けられたことが、その何よりもの証なのだろう。

 

 最後に私が特に感慨深いと感じたやり取りを紹介したい。

 カスパルとリンハルトの食事の特殊会話、支援Aを達成している時にリンハルトは「明日にも食卓を共にできなくなるかもしれない」と口にする。カスパルは「気持ちは分かるけど、もっと前向けよ!」とリンハルトを鼓舞する。みんなで生き残って、また飯を食おうカスパルのこのセリフは、リンハルトが約束に乗せた切なる願いをカスパルがしっかり受け取った、その表れなのだろう。