カスパル=フォン=ベルグリーズについて語りたい

このブログはファイアーエムブレム 風花雪月というゲームに登場するカスパル=フォン=ベルグリーズというキャラクターの限界オタクである一プレイヤーが、推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについてただ語るという、それ以上でもそれ以下でもないブログです。次第に他のことについても語るかも。

カスパルとエーデルガルトの関係性を探りたい

 カスパルが所属する黒鷲の学級は三つの学級の中でもとりわけ問題児の多い、級長であるエーデルガルトにとっての負担が重そうな学級である。そりゃあ青獅子、金鹿にもアクの強い生徒は多いが、こと黒鷲においては、まずフェルディナントがエーデルガルト本人に強い対抗心を持ちなにかと突っかかってくる。喧嘩っ早いカスパルはエーデルガルト直々にプレイヤーに「目を離さないで」と言われる有様であるし、リンハルトとベルナデッタは放っておくと講義に出るかさえ怪しい始末。頼れる腹心ヒューベルトは何かと隠し事も多く、その全てを信頼の名の元に無視出来る訳でもないようであるし、比較的まともなドロテアとペトラはそもそもの身分や立場の為に本来一番気にかけてやらないといけない立ち位置。ドゥドゥ―やアッシュらからあまり堅苦しく、対等ではない形で接されることをディミトリは苦く思っているが、対照的に黒鷲の面々は次期皇帝に対して遠慮という物が一切ない。級友たちに散々に振り回されるエーデルガルト、しかし最後には彼女の決断で黒鷲の皆が振り回し返される、というのは今思えばよくできた話である。

 さて、今回のテーマはこちら。

 

カスパルにとってエーデルガルトはどういう存在なのか?

 

 これまでもカスパルとエーデルガルトの関係については軽く触れてきたが、今回はこの二人の支援会話にフォーカスをあてて推し語りを展開していこうと思う。

 

 

「貴方の腕前は皆の中でも一、二を争うほどなのだから......」

「ほんとか!? エーデルガルトにそう言われると嬉しいな

 

 支援会話Cではカスパルが訓練をしているところへエーデルガルトが話しかける場面から始まる。「いるなら声かけろよ!」「声かけたわよ」なんてコント染みたやり取りを挟んで上記の台詞につながるのだが、この台詞からエーデルガルトがカスパルの実力を高く評価していることが分かる。武家の産まれで将来のビジョンが明確(武力一本で身をたてる)なカスパル設定上士官学校入学時点で他の生徒よりも高い戦闘力を有している(スタートラインが違う)ということだろう。じゃあなんで初期値低いん?

 一方でカスパルが「エーデルガルトに言われると」嬉しいと返していることから、彼も彼でやはりエーデルガルトは特別、という認識があるのだろう。カスパルは敬語が使えないが、一方で目上の人には「お前」ではなく「あんた」と呼ぶ、という謎の分別がある。エーデルガルトに対しても一貫して「あんた」呼びなのでこれでもそういった認識はあるのだ。

 訓練をやめられない理由を知ったエーデルガルトがカスパルに同情の念を示すと、一転カスパルは自分の立場に苦はないと返す。「何でも自分基準に考えるのがエーデルガルトの悪い所」と真正面からディスるのでエーデルガルトは喧嘩を売っているのかと憤るが、カスパルは「そんな気はないけど喧嘩ならバッチコイ!」の姿勢。カスパルは喧嘩に発展しても全然構わないので暴言で相手を怒らせるデメリットが薄い。タチ悪いな! 呆れたエーデルガルトがカスパルの元を去り、何とも言えない違和感がカスパルに残って支援Cは終わる。

 のちにエーデルガルトは戦争を引き起こすことになるが、カスパル含む黒鷲の級友達はその仲間としては数えられていない。にも拘わらず訓練のやりすぎを心配するなど級長として級友のことをよく見ている様子は、あとから思えば中々に感慨深いものである。聖廟での戦闘会話でも、彼女は出来れば黒鷲の仲間を失いたくはないと考えていた、「学校ごっこ」の中でも確かな友情はあったのだろう。

 

 

「おーい、急に話がデカくなったな......まあでもそう簡単には変わらないだろ?

「それはどうかしら......私は、優秀な者が出世し、人の上に立つ世の中を実現する

 

 支援Bはエーデルガルトがカスパルに「自分が家を継げることになったら嬉しいか」と尋ねるところから始まる。実力があっても家を継げない、そういった社会を当たり前のように受け入れるカスパルとそんな世界を受け入れないエーデルガルト在り方の違いが明確に描写される会話。エーデルガルトは実際に理想を行動に移し、実現してみせる、及び完遂直前まで迫る。この支援会話は二人の対比、というより寧ろスケールの違いを描いているとも言える。

 カスパルは家族思いの優しさもあるが、類まれなる努力の才能と根性を「自分が家を継げるような世界に変える」という方向性に向けようという発想がない、エーデルガルトからその可能性を示されても「自分には到底及ばない話だ」と諦めてしまっている(もしくは、やはり自分がどうこうするといったところへ考えが及ばないのだろう)。

 当然次期皇帝という立場にあり一定の権威を持つエーデルガルトとカスパルととでは話が変わってくるが......。

 カスパルはエーデルガルトの目指す世界での自分の可能性を聞いても自分のやることは変わらないと言い、「卒業したらやっぱりあんたの為に戦うしかない」と唐突に告げてこの支援は終わる。カスパルの方がモヤモヤしていた支援Cとは対照的に、すっきりと燃えているカスパルの側でエーデルガルトが心を乱される終わり方である。

 地味にこの支援ではエーデルガルトの思想、目的の一端が明かされているが、カスパルでなくても当然この後エーデルガルトが起こす事を想像することはできない。主人公の選択によってはカスパルはエーデルガルトと対立することになるが、エーデルガルトらが聖廟から逃げた後「俺らがあいつらを止めてやらねえと」と語ることから、彼の戦いの本質は「エーデルガルトが取り返しのつかないことをしでかす前に止めなければならない」という、「彼女のための戦い」に他ならない。一方で他の生徒たちがエーデルガルトに怒りを露にしたり未来を悲嘆している様子が描かれる第一部最後の散策会話ではカスパルは「親父は魔物よりやべぇから親父が攻めてきたらヤベェ!」とどうにもあっさりしたものである。

 

 一方で、主人公がエーデルガルトと共に戦うことを選んだルートでは支援Aが解放されるが......

 

「私はね、貴方のことをずっと犠牲者だと考えていたのよ」

 

 支援Aでエーデルガルトは今までカスパルのことを「自分が憎む社会の在り方から救うべき存在」と見ていた、という事実が明らかになる。エーデルガルトの思想は一貫して「優秀な者こそが世界を率いる存在であるべき」、同時にカスパルのように優れた実力と弛まぬ努力を続ける精神の持ち主が埋もれてしまうことを看過できなかったのだ。

 

「貴方は......自分で選んで、その生き方を貫いているのね

 

 同時にエーデルガルトは、ここでカスパルに対して抱いていた誤解に気づいたとも語る。幼い頃から悲惨な目に遭い続けた、荒んだ自分では到底想像できない程に純粋なその人間性何のしがらみにも囚われない男

 

「あんたのほうがすごい。どんなもの背負っても、下向かねえで、どんなしがらみだってぶっ壊していく

 

 一方でカスパルはエーデルガルトのことを上記のように表現する。しらがみに囚われないことと、しがらみをぶっ壊すこと、きっとその二つは似ているようで、大きな差異がある

 カスパルにとってのエーデルガルトはきっと、ともすれば彼の父親のように、敵わない存在なのだ。武の実力ではなく、人としての器、大事を為す意思の強さが。敵わない故に大きな存在で、親しく接しているように見えてどこか遠い存在、だからやはり彼はエーデルガルトのことを「あんた」と呼ぶのだろう。カスパルはこの支援で「あんたもあんたなりに悩んで、間違いに気づいたりするのか」とエーデルガルトを見直した、という。悩むことも間違えることも、それに気づいて過ちを認めることも、常人にとっては当たり前のこと(気づけないおバカ属性は別にして)、そんなことにも驚くほどにカスパルにとってのエーデルガルトは超常的な人だったのだ。

 

「改めて宣言するぜ、エーデルガルト。オレはあんたのために戦う。全力で喧嘩して、全力で敵をぶっ飛ばす! あんたはその後を、ついてきてくれよな!

「ええ、もちろんよ。私たちの未来......切り拓きなさいカスパル

 

 支援Aの最終盤のやり取り、全ての支援の中でも随一の爽やかさを持つ締めである。カスパルのテーマである「未来を切り拓く」、この言葉がエーデルガルトの口から発されるのがとてもエモい。エーデルガルトが歩む道は、あまりにも多くの犠牲が積み重なる、血に塗れた果てに終点を構える道。ともすればカスパルの正義と相反しかねない道、そのような道をカスパルが先陣を切り走る理由は、きっとこのルートでのカスパルがエーデルガルトに己の正義を託したからなのだろう。

 

 

二人の未来を切り拓いた先には......?

 

 支援Aを迎えた二人には、他の異性生徒同士の例に漏れずペアエンドがしっかり存在する。支援Bでエーデルガルトがその可能性を示したように、実際にカスパルは軍務卿に就任し、戦前と変わらずエーデルガルトの道を切り拓いているようだ。自由な身となって世界を放浪するイメージが強いカスパルだが、軍務卿として活躍する未来も彼にとって望み通りの未来の一つだったのだろう、この後日談ではエーデルガルトと共に生涯にわたってフォドラの統治に身を捧げたのだという。なお度々暴走して事件を起こしエーデルガルトを悩ませた、とも書いてあり実に彼らしい。その結果解決した問題も多く二人の公的な関係は悪くなかったとも書かれているが......ほんとかなぁ。

 そしてなんと、この二人しっかり夫婦となっていることが名言されている。皇帝と軍務卿の夫婦というのもなかなか凄い話である。二人の私的な関係は公的な物以上に多くの問題を抱えた、と書かれてあり大爆笑物であるカスパルが後日談の軍務卿や旅で問題を起こしまくることは散々書かれてるんだ、それ以上の私的な問題!? 何があったの!?

 そもそもこの二人の支援会話それっぽい様子は全く見られない。カスパルのペアエンド相手ではベルナデッタ、ドロテア、ペトラ、ヒルダと(いずれも女子側からではあるが)恋愛を想起させるアプローチが支援会話内で展開されているのに、この二人にはそれが一切ない。アネット、カトリーヌ、おまけに結婚が名言されていないシャミアとの支援会話でもそういう感じに見えなくもないやり取り(こちらはいずれもカスパルからの矢印も見ようと思えば見れる)が含まれているのに、カスパルエーデルガルト支援では......うーん......見ようと思っても......無く......ない......?

 そんな事情もあってか私はどうにも二人が恋に落ちる流れが全く持って想像できなかったりする。しかし黒鷲、覇道ルートでしか成立しないこのペアエンドは、前提として覇道ルートだけの特徴、「空白の五年間を共に戦っていた」という事実を鑑みることができる。カスパルは第二部開始直後「先生がいないことでエーデルガルトは実に荒れていた」とからかうような口ぶりで教えてくれるし、敵対ルートでは主人公に「先生とエーデルガルトは分かりあえると思っていた」と語るなど、エーデルガルトに対する言及と共に「エーデルガルトが慕う先生に対する嫉妬」みたいなものを見ることが......何? 妄想が過ぎる? うるせえ!

 他の例を見るにカスパルの恋愛は大抵相手側からのアプローチで発展していると考えるのが自然である。エーデルガルトにとってのカスパルは「自分が想像もしなかった純粋な存在」でありカスパルのような人間像は自分が実現しようとする世界の中で輝くべき理想の存在である(理想と呼ぶには少々おつむが足りない気もするが)。順調に支援レベルを上げていれば第二部開始時点で支援Aを開放できる、カスパルに対する誤解を正すのはこの空白の五年間でのことだったろうから、師を失い不安定な彼女にとってカスパル心の支えだったのかもしれないあと手のかかる問題児の「あんたのために戦う!」って言葉にあっさり心を持っていかれたチョロい皇帝とかでも可愛いよね。

 

 

 今回は一本丸々カスパルとエーデルガルトに焦点をあてて後半になるほど妄想過多でお送りした。もともとは書くつもりのないテーマであったので、既に一度触れた部分の繰り返しになるところも多くあったと思うが、次回以降も数回、似たようなテーマで書くことになると思う、ご了承願いたい。

まだまだあるぞ!推しの好きな台詞を紹介したい

 これまで様々なテーマに則っての推し語りを展開してきた。そろそろ一通り推しの魅力をお伝え出来た頃合いだと思う。

 

 でもまだまだあるぞ!

 細かい台詞で「あ~、好きだなぁ~」ってなる部分が沢山あります。今回はもう単純に、今までで紹介できなかったカスパルの好きな台詞を雑多に紹介したいと思う。

 まずはこちら!

 

「うーん、わからん! わからんから食堂行こう!

 

 好き! 勢いの良さが好き!

 これはラファエルとの支援会話Bの締めの台詞。この支援会話では、カスパルがラファエルのような体躯を手に入れるべく彼に助言を求めるというもの。ラファエルは「食うってことは体をデカくすることだ」とカスパルに更に食事量を増やすように言い、その結果カスパル太るというお話だ。ただでさえカスパルは大食漢なのに、それを上回るラファエルの凄まじさよ。

 例え大きくなれなくともカスパルには良いところが沢山あると無邪気に褒めるラファエルの器の大きさに心を打たれたカスパルは自分にもその器の大きさこそが必要だと気付く、でも器を大きくする方法がわからない......分からないから食堂行こう! という流れ。なんで?(一応器の大きいラファエルを真似る=食べるしかない? という思考が描かれてはいる。んなわけあるかい)

 支援Bで終わるだけあってコメディ全開なこの支援、なんかもう、二人ともおバカな感じが凄くいいんですよね......「山盛りのてんこもり」とか、「食卓の底なし沼」とか、出てくる発現がいちいち馬鹿っぽいんです。会話もいまいち噛みあってない感じもあるし、相手の言う事どころか自分の言う事さえ分かってない感じが......頭空っぽにして楽しめる支援会話はいい! ラファエルの他の支援ではディミトリとの支援も大好きですね、あんなん笑うわ!!

 一応真面目な名言として「一日怠けりゃ、三日分鈍る」という言葉も飛び出している。カスパルのストイックさが表れた場面だ。それはそうとラファエルの「筋肉いじめる」って表現なんなん? なんでそこだけ物騒なん?

 

 じゃあ次!

 

「よっしゃー! 行くぞ、王都! 待ってろ、王都!」

 

 黒鷲、覇道ルートで王都を攻めると見せかけアリアンロッドを急襲する章、「偽りの乙女」での散策時の台詞。アリアンロッドを攻めることは黒鷲遊撃軍のメンバー含む極少数にしか知らされておらず、勿論そのことを口外してはいけない。そのためカスパルは王都を攻める、という演技をしているのだが恐るべき棒読みである好き

 ちなみに同章ではラファエルもほぼ似たような事を言っている。棒読みで。二人とも主人公に演技が下手だと突っ込まれるのだが、カスパルの方は「向き不向きがある」と演技が下手なことを自覚しているのに対しラファエルは自覚症状がない。更に翌節ではいよいよ王都を攻めるとなって二人とも本意気で上記のような台詞を話す。「前もこんなこと言ったような......?」と違和感を覚えるのだが二人ともそれがいつの話だったのかが分かっていない。この愛すべき馬鹿ども......

 

 なんかラファエル特集みたいになってきたけど、とにかく次!

 

「あ、もしかして白鷺杯のことか? 代表、俺でも全然いいぜ! 踊りだろうと何だろうと、勝負は勝つ!」

 

 見ての通り、白鷺杯を控えた散策会話での台詞。この男やる気である。実際に頼むと「大船に乗った気でいろよ」とくる。泥船の間違いでは? この流れだから書いておくが同節でラファエルも踊りには自信があると言っている。いざ頼んだら頼んだで「一笑いとってくる」とか言うけども。やめてくれよ頼んだ後だともう取り返しつかないんだよ。

 しかし、考えてみればカスパルも貴族の息子。踊りの嗜みは本当にあるのかもしれない。舞踏会前夜のムービーでも踊りに誰を誘おうか、なんて言っているし、女神の塔イベントでは「食ったり踊ったりで忙しい」と言っているので踊ることに好意的な印象を持っているようだ。ここら辺の情報がないとカスパルなんて絶対踊り下手なキャラだと思うのに、この様子であれば案外力強い、迫力のある見事なダンスを披露するのかもしれない、なんて思ってしまう。どっちでも美味しいよね!

 

 どんどん行ってみよう、次はこれ!

 

助けがいるんだろ? やるぜ」

 

 五年後の連携計略時の台詞の一つ。カッコイイ。こうイケイケの、頼れる感じのカスパルの台詞好きです。

 カスパルの五年後の戦闘台詞は他にもカッコいいものが多く、士官学校時の三枚目感が抜けてワイルドタイプのイケメン感がかなり強くなる物騒さもマシマシになる。

 成長限界時の「これが俺の限界!? いや、まだのはずだ!」、撤退台詞の「俺はもっと強くなる......絶対だ......! そのためにも、ここは退くぜ......」、兵種マスター時の「この力で、俺は未来を切り拓くんだ!」あたりもお勧め台詞。カスパルらしさとヒロイックさをこれでもかと全面に押し出した、カスパリスト悶絶物の台詞だ。

 ちなみにカスパルは連携計略を含むいくつかの台詞パターンが他の生徒より少ない。理由は単純で、敬語が使えない=敬語差分がないから。同様のキャラクターには、うん、そうだね、ラファエルがいるね。この二人はカスパルアッシュの類似性とはまた違った、もっと直接的なところで似てるところが沢山あるね。

 

 最後はこちら!

 

「悲しみも、つらさも、清も濁も、ごちゃまぜに突っ走ってきたけどよ…...」

俺は、先生と一緒に最後まで戦えてよかったぜ!

 

 黒鷲、協会ルート最後の散策会話。闇に蠢くものを討ち果たし戦争が終結を迎えた場面でのカスパルの台詞。

 三級長全員が自軍におらず、マップや展開の多くが金鹿ルートと被っている、何より血の同窓会に参加できないことから少し評価の低いような気もする銀雪ルート、このルートの最大の魅力は全ルートで唯一戦争が終結した後の散策会話を楽しめることだろう。レア様の容態など懸念点は残っているものの、多くの生徒が長きにわたる戦いの終わり、自軍の勝利を喜ぶ姿を見せてくれる。まあその後もうひとヤマあるんだけどね!!

 カスパルも彼らしく大いに喜びを爆発させて、先生の統一王就任を楽しみにしている。無邪気に感情を爆発させられる推しが好きだ。

 後カスパル難しい言葉を使っているのを聞くとちょっと嬉しくなっちゃうんですよね。君よく「清濁併せ呑む」なんて言葉知ってたね。黒鷲覇道ルートで聞ける「俺の作戦・無為無策」といい、やはり貴族だけあって学がない訳ではなさそうだ。この台詞では他にも「かなしみ」や「つらさ」とネガティブな台詞が表に出てきているのも特徴。苦しい戦況が続く中最前線で声を張り上げ、明るく仲間を鼓舞し続けてくれたカスパルにとっても、やはりこの戦争が辛く厳しい戦いであったことを示している。それだけに直後に控える戦いでの「クソッ! ここまで来て......なんでレア様と殺し合わなきゃならねえんだよ!」というセリフが凄く重く聞こえてくる

 

 

 言ってしまえばカスパルの台詞全部好きみたいなところがあるので、細かくあげていけばまだまだ好きな台詞は沢山ある。本日は雑多にカスパルの好きな台詞を紹介してきたが、似たようなことをあと数回するかもしれないのでその時はまたお付き合いください。

外伝だけじゃない?カスパルと死神騎士の因縁

 今まで10回にわたり我が推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについて、様々な角度から語ってきた。本日は遂に彼の外伝をテーマに推し語りしていこうと思う。

 外伝とは、風花雪月に登場する各ユニットを更に掘りさげてくれる、支援会話に並んで重要な要素の一つ。シルヴァンやローレンツなど一部の生徒を除いて二人一組で取り扱われており、その多くが、片方の生徒の家の問題の解決などにもう片方が協力するという形になっている。

 例えばフェルディナント・リシテア外伝ではフェルディナントの父の目撃情報が入ったのを機にエーギル公救出へ向けて軍を動かすことになる。ドロテア・イングリット外伝ではイングリットの縁談相手の素性を知っていたドロテアが彼女を守るために奮闘するという流れ。

 カスパルメルセデス外伝は前回触れた通りメルセデスの弟である死神騎士・エミールを巡る話となっており、姉弟のドラマを描く役割を果たしている。ならカスパルは蚊帳の外なのか、この外伝のメルセデスの相方はカスパルじゃなくてもよかったのか。私はそうは思わない。全てはこの外伝に向けての演出だったのかは定かではないが、本編の随所随所でカスパルと死神騎士にもまた奇妙な縁が描かれているのだ。

 ということで本日のテーマはこちら。

 

カスパルと死神騎士について語りたい

 

 勿論外伝そのものについても思う存分語っていくつもりだ。

 

 

「いやー、イエリッツァ先生って強そうだよな」

イエリッツァ先生には敵わねえけど......あんたになら勝てそうな気がしねえか?」

 

 まず初めに触れるのは、主人公が教師になると決まった後の散策会話。ここでカスパルイエリッツァこそが一枠空いた担任の枠に就任すると思っていた、と語ってくれる。彼は向こう見ずの負けず嫌いのように見えて「絶対に敵わない相手には自分が劣っていることを認められる」性質を持っており、彼の父と同様にこの時点でイエリッツァのことも「自分では勝てない相手だ」と認めていることが分かる。前回「メルセデスのイベント解禁にカスパルが必須であることのヒントは本編にはない」と書いたが、ある意味ではこの発言は伏線になっているのではと思わないこともない。「敵わないと諦めていた相手に、努力を続けて成長して真正面から戦って、そして勝つ」というのは激熱シチュエーションだ。でもこれがヒントだとは認めない、絶対にだ。

 ちなみに上記の台詞だけでは「先生には勝てると思ってるんだ!」と思われるかもしれないが、この台詞を受けて主人公は「(カスパルが自分に)勝てる」「勝てない」の二つの選択肢を取ることができ、「勝てない」を選ぶと「そっか......そうかもな。だけど、いつか超えてやるぜ!」とカスパルも反発する様子が無く、寧ろ好感度が上がる。「勝てる」を選ぶと「本気かよ!?」と驚いてくれるので、カスパル的には主人公もこの時点で自分より格上だと認識していることが分かる。

 

 

「おい! 来てくれ! イェリッツァ先生の部屋から女性の悲鳴が聞こえたんだ!」

 

 次に失踪したフレンを探すことになる章、「死神の噂」。ここでは戦闘開始前のムービーで少しカスパルにスポットがあたる。黒鷲ルートにおけるこの章の戦闘直前のムービーで姿を見せる生徒はエーデルガルト、ヒューベルト、そしてカスパルのみ。上記の台詞は節末までイエリッツァの部屋を訪れなかった場合にのみ聞けるレア台詞、フレン救出の突破口を開くという大役が与えられている。とはいえいざ姿を表した死神騎士と会話があるわけでもなく、戦闘会話が用意されている訳でもなく、「ちょっと目立ってるな~」くらいのものである。

 

 第二部において、青獅子と金鹿ルートでカスパルをスカウトしなかった場合、カスパルと死神騎士(とリンハルトも)は同じマップで姿を現すことになる。戦闘開始前に死神騎士のムービーが挿入され、そこに幼馴染二人も姿を見せるのだ。特に金鹿の方では死神騎士の「あの男(女)......来るか......」という台詞に「ん、誰のこと......まさか、先生か!?」と反応している。会話している差分の都合もあってか死神騎士からカスパルへ言葉をかけることはないが、外伝以外ではいや外伝含めても貴重な二人の絡みであると言える。

 

 

 とまあ、このように、外伝を除いても二人には浅からぬ縁があることが分かっていただけたと思う。え? 十分浅い? うるせえ!!

 どうせ本題はここからだ! 続いてカスパルメルセデス外伝「死神の噂」について語っていこう。

 

変わらないカスパルらしさと武人としての成長、大人のカスパルの魅力あふれた外伝

 

「帝国最強の死神騎士! お前を倒して、俺は強くなる!」

 

 この外伝は「のんきにおしゃべり」してた先生とメルセデスの元にカスパルが死神騎士の噂を持ってきたことから始まる。弟の襲来に冷静さを欠くメルセデスをカバーするように動いており、焦って飛び出そうとするメルセデスに主人公が「今は冷静に......(戦闘の準備できてないから待って)」の選択肢を取ると、自身も冷静でいられるものかと返そうとする一方で「相手はあの死神騎士だから確かに準備は必要だ」とメルセデスを諭したりもしている。戦闘が始まるまではいつになく頼りになりそうな振る舞いを見せるカスパルであるが、いざ戦闘マップに入ると......

 

『死神騎士は戦闘に加わる気がないようです』

『しかし、カスパルは死神騎士との交戦を望んでいます』

 

 なんでやねん。

 相手は敵将死神騎士、カスパル視点では殺すのは当然ではあるがメルセデスから「知り合いだから殺さないでほしい」「そもそも死神騎士には戦う意思がなさそうだし、仲間と合流して周りの帝国兵を倒せば退いてくれるかも」と説得されても「俺、あいつに挑みてえんだ!」「退いてくれるとしても、戦えねえかな?」と完全に戦いに愉悦を求めている。その後も増援に怯えるメルセデスの側で「俺の戦果稼ぎ要員の間違いだろ?」と、流石カスパル外伝、ノリノリである。いざ死神騎士とカスパルが対面した際の上記の台詞は中々にカッコイイが、命懸けの戦場には少々そぐわないこともあってか「......フ、単純な奴だ」と死神騎士からは笑われてしまう

 死神騎士=イエリッツァである、思えば本編中に描写はないが武術師範としてのイエリッツァにカスパルもお世話になることがあったはず。かつての教え子であるカスパルの成長した姿にイエリッツァも思うところがあったのかもしれない、口を開けばとにかく物騒なことと悲しい事ばかりの死神騎士がこのように笑うのは中々にレアな姿である。

 ただこの外伝通して思うのは、どうにもカスパル、死神騎士=イエリッツァであることを知らないんじゃないか? 流石に知る機会はあったにしても、そんなこと忘れてるんじゃないか? 死神騎士をイエリッツァとして見ると、カスパルのこの外伝での言動は色々違和感を感じずにはいられないので、そんな疑問も抱いてしまう。

 

 

やだね! あんた、メルセデスの弟なんだろ? 久々に会った姉ちゃんになんかねえのか!」

 

 帝国軍との死闘を切り抜けたカスパルメルセデスは、奥に逃げた死神騎士を追うことになる。メルセデスの怪我を気にかけたり、彼女の気持ちを察して一緒に追おうと提案したり、戦闘後のカスパルのムーブはなかなかにカッコイイ。

 しかしいざ死神騎士と再会した後のカスパル姉弟の会話に水を差しまくる。感傷に浸っているメルセデスの隣でゴーイングマイ・ウェイ、死神騎士からも遂に「口を挟むな」と言われてしまう始末。浮きまくっているので仕方がない。

 ただカスパルカスパルでただ空気が読めないというわけではなく、死神騎士から黙れと言われても黙れない意地があった。カスパルは兄との兄弟仲は良好、ここまでのメルセデスの言動で彼女が弟をいかに大事に思っているかも痛いほど分かっていたので、死神騎士がメルセデス正面から向き合わないことが許せなかったらしい。少々空気が読めない発言の様に見えても、「やだね!」と啖呵を切って兄弟愛を説くカスパルは私はとてもカッコいいと思う。彼の説教が影響してか関係ないかは分からないが、死神騎士はその後エミールとして不器用ながらメルセデスを心配する言葉を告げ、彼女に英雄の遺産を託すことになる。

 

「貴様なら、扱えるかもしれん......」

 

 さてこの外伝、通常ならメルセデスが英雄の遺産、「ラファイルの宝珠」を受け取って終わりなのだが、カスパルで死神騎士を打ち負かすことに成功しているとなんと死神騎士から彼愛用の武器「サリエルの大鎌」を託されるという追加イベントが入る。死神騎士がカスパルの実力を認め、「自分が殺すその時まで、メルセデスはお前が守れ」と伝えて去っていくのだ。この場には彼が執着する主人公も存在するのにカスパルにそう伝えている辺りも地味に凄い。このやり取りがあるとないとではこの外伝の印象も段違いなので、是非ともカスパルで死神騎士を撃破しよう。そしてカスパルで死神騎士を倒すのはなかなかに難易度が高いし、そもそも二人が軍から隔離された状況で始まる難易度が高い外伝なので、第一部の段階からカスパルはしっかり育てておこう。

 前回記した通り、この外伝を青獅子ルートでクリアすると、後の本編でメルセデスとエミールの別れを描いたイベントが解禁される。おまけにカスパルでの死神騎士撃破に成功した場合は、後に本編で戦う死神騎士はサリエルの大鎌を持っていない、という変化も起こる。

 カスパルカスパルで紋章を持たない為に英雄の遺産や神聖武器のような準専用武器がないので、サリエルの大鎌を持たせて運用するのはとってもエモい。しかし何を間違えたのか、サリエルの大鎌は槍の技能がA以上でなければ扱えないや、槍......。カスパルの得意技能は斧と格闘、普通は槍を鍛えないが、このサリエルの大鎌を目当てに槍術を鍛えると言うプレイも面白いだろう。

 

 

不満点

 

 さて、本日はカスパルの外伝を中心にカスパルと死神騎士の関係について探っていった。しかし、この周りの話で私は不満に思っていることもあるのだ。今回は思い切って(今までTwitter等で何度か言ってはいたけども)その不満点をも書いてしまおうと思う。具体的に言うと......

 

なんで死神騎士とカスパルの支援が成立しないの!!!

 

 あってよくない!? あってよくない!?

 死神騎士はDLCで自ユニットに追加されたキャラクターではあるけど、ちゃんと後からコンスタンツェやベルナデッタとの支援会話追加されてたよ!? カスパルは灰狼組との支援会話の追加もなかったし、ベルに追加するんならカスパルにもくれてよくない!?

 外伝を経てからの本編での直接対決でも敵対会話はないし、もっと、もっと死神騎士とカスパルの関係は公式で推してほしかったですねぇ!! 推してくれても良かったと思う!!

 あとメルセデスカスパルの支援も成立しないんです。外伝コンビではフェルディナントとリシテア、リンハルトとレオニーも支援会話はないし、バランスを考えても「支援会話が成立しないコンビで外伝を起こす」っていうのは悪くないとは思うんです。メルセデスとの支援があった世界線ではアネットとの支援が無かったかもしれない、アッシュとの支援がなかったかもしれない、それはそれで嫌だしね。

 でも「俺が殺すまでお前がメルセデスを守れ」はやりすぎじゃない!?

 公認じゃん!! 弟公認じゃん!! そこまでされると欲しくなっちゃう!

 改めて思うんですけど、カスパルメルセデスの絡みなかなかにいいんですよね......いいんですわ......支援やペアエンドがあったらカプとしてめちゃくちゃに推せてたのに......

 

 ここら辺、追加DLCとか何らかの展開で、どうにかなりませんかね......ダメですか?

 本気で怒ってるわけではないですけど、追加されたら泣いて喜ぶのでお願いします!! 

 

 

おまけ・・・・・・カスパルサリエルの大鎌

 

 不満で締めるのもあれなので最後にもう少し。

 サリエルとは「死」を司る大天使の名前である(Wikipedia調べ)。大鎌で死者の魂を狩ると言われており、「サリエルの大鎌を担ぐ死神騎士」というのはとても原点のイメージに合っている。

 じゃあそんな武器をカスパルに持たせるのはどうなの? ギャップがいいじゃんね?

 カスパルは死神騎士とは対照的に明るく元気で太陽のような男。しかし同時に味方ユニットの中でもトップクラスに人を殺すことを厭わない男でもある。必殺台詞は「その首寄越せ」だったり「死ぬ覚悟はあんだろ?」だったりするし、戦果を稼ぐことに拘りを持っている以上彼が戦場で重ねる骸は一つ二つじゃ収まらない

 彼の大声は戦場で目立つ、戦場で戦い生き残れば生き残るほど、その存在感も危険性も、彼の犠牲者も増していく。味方にいれば頼りになる存在であるが、敵からすれば彼もまた立派な死の象徴、「死神」に違いないと思うのだ。

 そう考えればカスパルサリエルの大鎌は正にお似合いとも思える。少し黒い推しも自分はいいと思います、という話でした!

名誉ファーガス民カスパル!カスパリスト的青獅子ルートの見どころ

 風花雪月には「スカウト」というシステムが存在する。本来別の学級に所属する生徒を自学級に引き入れ、第二部以降も自ユニットとして扱えるシステムで、級長や従者など一部のユニットを除いて全員を引き抜くことも可能。当然スカウトした生徒とは敵対することもない(最悪敵対しても助命することが可能)なのでとても優しいシステムに思えるが、一方でこのスカウト制度により母国と戦う運命を背負う者、家族や親友と刃を交わす者など残酷な展開が引き起こされたりもする罪深い一面を持つ。

 さて、風花雪月をプレイする際、「この周回では誰をスカウトしようか」と頭を悩ませる経験をした者は多いことと思われる。「可能な限り全員スカウトしたい!」というスタンスの先生方も、第一周目であればそうはいかない。スカウトには、各生徒に対応した主人公自身のある程度のステータスと技能レベルが必要とされており、全員ともなると流石に間に合わない。故にある程度の吟味が必要とされる。

 勿論自学級の弱点を補える生徒、自学級の生徒と効果的な支援が組める生徒、先生の好みなどを勘案し自由にスカウトを行えばいい。しかし青獅子ルートをプレイする際にはカスパル=フォン=ベルグリーズのスカウトは必須である。お勧めとかではない、必須なのだ。その理由は......

 

青獅子ルートでメルセデスカスパルの外伝をクリアした際のみ解放されるイベント、イラストが存在するから

 

 ね? 必須でしょう?

 カスパルメルセデスの間には支援関係もなく、この外伝を発生させるヒントなどなにもないので、初見ではカスパルをスカウトせずに青獅子二部まで進めてしまったプレイヤーも相当数いるはず。本ゲームにおいてもなかなかひどい仕様である。肝心のイベント内容はというと、死神騎士を討ち果たしたあと、死にゆく彼にメルセデスが「エミール......」と彼の名を呼び、姉弟の最期の会話を交わすというもの。カスパルは関係ないが悲劇的で感動的で中々に重要なイベントである。悲劇の姉弟にせめてもの救いを与えるべく、青獅子ルートをプレイする際は是非ともカスパルをスカウトしよう。力と格闘術を鍛えるのがスカウトの近道だぞ!

 

 

カスパリスト的に見逃せない青獅子カスパルの魅力

 

 折角青獅子にスカウトしたならカスパルの魅力を余すことなく堪能してほしい。今回は青獅子でしか味わえないカスパルの魅力と青獅子以外でも味わえるっちゃ味わえるけど青獅子で味わいたいカスパルの魅力を紹介。ここで挙げるそれらの魅力は、具体的に言うと、

・アッシュ、及びアネットとの支援会話

ディミトリを巡る二つの会話

メルセデスとの外伝

 これら三項目である。今回は太字の二項目について触れていこう。

 

 

アネットとの支援会話

 

「おう! アネットじゃねえか。何ひからびたリンゴみてえな顔してんだ?」

「もー! からかわないでよ、カスパル!」

 

 割ととんでもない暴言から始まるアネットとの支援会話だが、この支援でのカスパル冗談抜きでカッコイイ。支援C、支援Bともにアネットが失敗をしてしまい、カスパルが彼女の弱音を聞いて励まし、アドバイスをする(基本的に気にするこたねぇ! 失敗は後で取り返そうぜ! しか言わない)という展開なのだが、支援Bのシチュエーションが「部隊から逸れて怪我までし、命さえ危ういアネットを助け出し担いで帰る」というもの。上官失格だと嘆くアネットに「役立たずな上官の為に部下はああまで必死にはならない」と慰めるのといい、完璧なイケメンムーブである。

 支援Aでは数度とカスパルに励まされたアネットが「失敗しない為に気を付けていること」を問うが、カスパルは「そんなものはない!」と力強く返す。参考にならないような答えではあったが改めてカスパルの強さを知ったアネットは「カスパルは強くてかっこいいね。そういうとこ、好きだな」と告げ、カスパル「俺もお前のこと好きだぜ!」と返す。

 

エンダァァァァァアアアアアアアアイヤァァァァアアアアアアア♪

 

 まあその後二人で夕陽に向かって全力疾走しちゃうので恋愛的な告白とか、そういうんじゃないんだろうけどさ。直球の「好き」にドキドキしたカスパルスキーは多いのではないだろうか。

 この支援を通して、カスパルはアネットに対して「うじうじ悩んでいるのはアネットらしくない」と一貫して告げている。元気で明るい、優しくて努力家、カスパルとアネットはきっと根がとても似ているのだ。違う点はというとアネットの方が少々打たれ弱い事。言い換えればカスパルの方が少々無神経なのかもしれない。支援Aで「怖がっているからドジを踏む」と言うカスパルに「人の命の懸かる戦場で、失敗が怖くない訳ない」とアネットが返す辺りからもそういった心境が窺える。

 とはいえやはり二人は似た者同士。カスパルと支援のある女性陣の中で最もカスパルと同様の長所を持つのはアネットだと私は思う。夕陽に向かって全力疾走しだすカスパルに「おおー!」と元気よくついていける女子はアネットしかいない

 後日談では二人が結ばれる様が記されているが、その内容は「相変わらず失敗の多い魔導学院の教師アネットが山で生徒たちからはぐれて遭難、諸国を遍歴していたカスパルがそれを救助し、彼女を放っておけずにフェルディアに居つき、次第に二人は結ばれた」というもの。支援Bをなぞるようなイケメンムーブ。運命的な再会を果たし結ばれた二人に憧れる生徒たちも多かった、とまで書かれている。やはりアネットといる時のカスパル特別ヒロイックに描かれている気がする。黒鷲、覇道ルートだと内容が変わり、こちらではアネットがまさかの「帝国の母」と呼ばれるようになっているが、家庭では公務と反対にカスパルがアネットを支える立場だったとも記されている。

 

 

青獅子限定の散策会話

 

 対帝国のルートにおいてはカスパルの義理の叔父であるランドルフが第二部序盤の敵将として立ちはだかる。彼とカスパルには一応敵対時の専用台詞が用意されているが、カスパルは彼に特に思い入れもないので悲劇的な展開にはならない。第一部では専用会話から見るに、どうも二人ともはっきりと相手のことを覚えていない始末である。

 そんなランドルフが最も存在感を発揮するのは青獅子ルート。14章で敗退してから、ディミトリに執拗に、ねちっこく、身も心も壊されてしまう。己の信念を全て否定され、化け物だと断定した相手に「お前も同類だ」と突き付けられ......結局彼がディミトリから目を潰される前に主人公によってその命は絶たれるため肉体的にはどれだけの拷問じみた行為をされたのかは分からないが、武人としての尊厳を損なわれる最期だったことは間違いない。

 

 そんな彼の最期には、流石のカスパルも思うところがあった様子。現在の自分の大将であるディミトリのやり方を受け入れられず、同時に「帝国出の自分なんてあいつは信用していないんだろうな」と肩を落とす様はもの悲しささえ覚える。帝国出だと重要な仕事が回ってこなくていいとか言う幼馴染とは大違いである。

 ランドルフの無惨な最期にカスパルが気落ちする場面で、プレイヤーは彼にかける言葉を二つの選択肢の中から一つ選ぶことができる。「申し訳ない」を選ぶと「先生を怨んじゃない」と返してくれるが、「これが戦争だ」を選ぶと「あれは戦争じゃねえだろ。ただの私怨だ。先生はあいつの味方か?」と返す。ただ闇雲に命を奪うだとか、どんな暴力も許されるだとか、戦争とは断じてそういったものではない。カスパルの戦争観が意外な形で現れる場面だ。

 このゲームを通してカスパルには沢山の台詞があるが、私はこの台詞が一番好きなのだ。例え相手が恩師であっても、自分の考えをはっきりと言える、間違っていることは間違っていると言える、そんな彼が好きなのだ。皆さんにも一度聞いていただきたい台詞であるが実際にこちらの選択肢を取ると好感度がデューンすることだけは気を付けてもらいたい

 

「先生! ディミトリがさ、謝ってきたんだよ!」

 

 この話には続きがある。ディミトリが多大な犠牲を払いながらも遂に自分自身を取り戻した後、カスパルの口からディミトリがカスパルに謝罪をしていたことが語られる。カスパルは前述の通りランドルフに思い入れはなく、既に終わった話と考えていたカスパルは自分に謝られても仕方がないと思っていたようだが......

 

「それでも、あいつが変わったことを、喜ぶべきなのかもなぁ」

 

こ こ も す き

 

 もう大好きですね、この台詞も。なんなんだろう、こっちは具体的な理由とか思いつかないんだけど、前の台詞とセットになってるからかな、あまり関わりのなさそうなカスパル(君そんなんばっかりだな)からディミトリの成長が語られるってのもエモいし、ムービー上では青獅子では青獅子のメンバーしか出てこないけど、ちゃんと他のスカウトメンバーも仲間なんだよって示されてる感じがしてとてもいい。おんなじ理由でディミトリが「ベルナデッタじゃあるまいし引きこもったりはしない」みたいな軽口飛ばすシーンも好き。

 あとなんか、この台詞の、大人感? カスパルの大人感? 堪らんのよ! この台詞からカスパルの方の成長も感じられる気がして、ほんとすき。みんなもちゃんと外伝の為にカスパルを引き抜いたら、その後も彼に構ってあげてね、我が推しは尊いよ。

 

 

 さて、今回は青獅子のカスパルに焦点をあてて見てきたわけだが、三項目に挙げた点のうち回収していない点もある。アッシュに関しては以前それはそれは濃厚に語ったので良しとして、外伝に関しては肝心の内容の方がノータッチだ。その辺はいずれまた、別記事でしっかり触れようと思うのでお待ちいただきたい。

 もう一つ、青獅子にカスパルをスカウトするとなると、当然帝国の生徒たちとは敵対することとなる。リンハルトとの対峙、それもある意味青獅子カスパルの魅力に挙げられるのかもしれないが、幼馴染を敢えて別離されるのか、それとも二人ともスカウトしてズッ友にするのかは各先生次第である。

勇将、カスパルの戦争観と死生観

「ここに来るまで何人、顔見知りを殺してきた?」

 

 主人公の選択により、道によっては自らが導くかもしれなかった生徒たちを己で殺すことになる。上記の台詞はファイアーエムブレム風花雪月の本質を正に穿つ言葉だけあって、この台詞が印象に残っている先生も多いのではないだろうか。

 

 しかしこの台詞、発するのは青獅子、金鹿を選んだ時に敵として出てくるカスパルである(主人公やリンハルトで相対した場合は上記の台詞は聞けない)。しかも彼が上の問いを投げかけた後、続く台詞は「全力の喧嘩、いくぜ!」、彼を撃破した時の台詞は「気にすんな......負けたら死ぬ......そういう喧嘩だろ......」である。

 

 なんか......浮いてない?

 知っている人を散々殺してきた相手に憤りを見せるような台詞を吐くのに、その次には自分が本気を出して、正に命を懸けて戦えることを喜んでいるような台詞。死に際は穏やかにも余りある潔い諦めの言葉。最初の台詞だけ見事に浮いているのである。まるで「対帝国ルートで立ちはだかる生徒の誰かにこの台詞を言わせたいもののいまいち適任もいないから、苦渋の策でカスパルに言わせておこう」みたいな雑さを感じる。

 しかし幾周にわたりこのゲームをプレイし、こうして何度もストーリーを振り返ってきた経験から言えば、風花雪月はそういった雑さとは割かし縁遠いゲームである。

 きっとカスパルがこの台詞を言うのにも訳がある......その謎を解き明かすため我々はアマゾンの奥地に......は向かわないが、今回のテーマはこちら。

 

カスパルの戦争観や死生観を解き明かしたい

 

 死生観というと大げさではあるが、要は彼にとっての命の価値とは......みたいなことを色々な台詞から探っていきたいのである。

 

 

 本ブログでは割と繰り返しになるが、カスパルにとって戦争というものは身近な存在であった。士官学校入学したての生徒の中ではトップクラスに戦う覚悟がなっており(というかある種の逸楽を戦場に求めている節がある)、戦場適正は黒鷲においてヒューベルト、エーデルガルトに次いで、フェルディナントやペトラに勝るのでは......くらいにある。盗賊のような悪人であれば、殺してしまうことも厭わない。

 

「これが本物の戦い......! 意外と燃えるじゃねぇか!」

 

 恐らく初めて人を殺した、その反応がこれだもんね。リンハルトやベルナデッタの初討伐台詞の直後にこれを引いたらプレイヤーがドン引きすること間違いなし。五年後に解禁される彼の外伝でも、敵を殺すつもりかと問われて「駄目なのか?」と返すので、悪い奴はとりあえず斬る! という精神が窺える。

 戦場に出るからには命の覚悟は出来ているのだろうというのが彼の主張であり、それは勿論彼自身も例外ではない。味方、敵時問わず死亡台詞はただ自分が弱かったこと、相手が勝ったことを淡々と受け止める爽やかな最期であり、自分を討った相手、自分を失う仲間に気遣うような言葉さえ遺すのは身をもって「戦場とはそういう物だ」と教えているかのよう。

 では、そうまでして彼が戦う理由は何なのか。元々カスパルは、戦場で武功をあげて名をあげなければ生きていけない立場の人である。しかし五年後では、特に自ユニットとして使用するときは顕著になるが「仲間の為の戦い」を強く意識するようになる。瀕死時は「ギリギリまで戦って、少しでも勝利に」、レベルアップ時は「俺が強くなりゃ、みんなも楽になる」、主人公との支援会話では戦場に出るようになって自身の正義と仲間の身の危険との葛藤で悩む姿を見せるように。仲間思いで軍の中の一人、としてのカスパルが明確に描写される。

 

 では、改めて冒頭の台詞に向き合ってみよう。

 カスパルは戦闘の末自分が死ぬことを恐れないしその事実に怒りも見せない。彼もまた戦場で沢山の命をノリノリで奪ってきた以上、相手のそういった行動を批判できる立場にない。

 しかし「仲間の死」に関しては怒りを抱えずにはいられないのだ。彼がペトラと反対の立場であれば親の仇を許せない、としきりに言うのも似たような側面があるのだろう。「自分のあずかり知らぬところで大切な人が死んでしまうことが許せない」というのが私が導き出した答えである。

 例えば黒鷲にはベルナデッタやドロテアのように本来戦場とは縁のない人物も存在する。なにより彼の幼馴染のリンハルトは血を見ただけでグロッキーになる戦場非適正人物だ。同じ戦場にいたのなら、カスパル自身が強ければ仲間を守ることもできるだろう。それが適わなかったなら、その責を自分に負わせることもできる。だが、自分の知らないところで失われた命に関してはそうもいかないカスパルはそれが許せない。冒頭の台詞は、そんなやるせなさが彼から吐露された、その瞬間なのだと思う。次の瞬間には目の前の戦闘に集中する、喧嘩好きのカスパルに戻る。故に冒頭の台詞のみが浮いて見えるのだ。

 

 

どこまでも貴族の次男

 

 どうにもカスパルを見ていると、彼が自分の命の価値を随分と低く見ているような気になる。何も継がないだけ身軽であり、まるで自分の死が大局に影響を及ぼさないと見ているかのような......だから咄嗟に命を懸けるような真似もしてしまう、無茶もする。リンハルトが彼に「生きてほしい」と切に願うのも納得の危うさだ

 反対にカスパルにとって他者の、仲間の命は重い。「戦場で死ぬことに意味を見いだせない」と語り、己もまた「生きたい」と願うリンハルトの隣は、そういった意味でもカスパルにとって居心地がいいのだろう。

語られし存在、カスパルにとってのベルグリーズ卿を妄想りたい

 風花雪月には魅力的なキャラクターが多数存在する。生徒を中心としたプレイアブルとして使用できるユニット以外にも、闇に蠢く者などの敵ユニット、ジェラルトやロドリグなどのNPC、フェルディナントの父であるエーギル公は戦場でユニットとして登場することはないがプレイヤーに強烈な印象を残しただろう。

 同様にプレイヤーに大きな印象を残しながら、しかしビジュアルが用意されていないキャラクター、本人自体は登場しないキャラクターもいる。その代表格がヒルダの兄であるホルスト卿と、カスパルの父であるベルグリーズ卿だろう。ホルスト卿もそれはそれはアクが強い人物で、バルタザールの登場でその人物像が更に掘られるなど要注目の存在ではあるが、今回語るのは以前から数度と名前が出ていたベルグリーズ卿についてだ。

 テーマを挙げるならズバリこう!

 

カスパルにとってのベルグリーズ卿を妄想かたりたい

 

 いかんせんベルグリーズ卿は本編に登場しないキャラクター、何を語ってもそれは全て妄想......とまで言うと言いすぎだが、とにもかくにも今回は今まで以上の妄想語りである。カスパルにとって間違いなく大きな存在であるベルグリーズ卿に焦点を当てて、今日も推しの人物像を解き明かしていこう。

 

 

 風花雪月の生徒の多くは、何かしら彼らの家族に触れたエピソードが本編中で語られている。特に青獅子の学級では、イングリットとドゥドゥ―を除く生徒全員の、家族の誰かしらがプレイヤーにも顔を見せている。それ故に彼らの背景も見えやすいのだが、全員が家族関係に何かしらの問題を抱えていることが明かされている。

 家出した父を追ってガルグ=マクにやってきたアネットなんかはこれでもまだマシな方で、シルヴァンは紋章が原因で兄弟仲に亀裂が生じ(なんて言い方では生易しすぎて適切ではないが)本編中に実際に相まみえることになり、メルセデスの義理の父はろくでもない人間だったのだろう、義理の弟(父から見た実子)のエミールがブチ切れて最終的に義父はエミールに殺されている。グレンの死は彼の弟であるフェリクス、許嫁であったイングリットに大きく影を落としているし、両者共それ以降親とはうまくいっていないようである。家族との不和が描かれていないメンバーの場合は基本的に家族に死者が出ている。ドゥドゥ―は家族どころかダスカーという地単位で見ても数少ない生き残りであり、アッシュは幼くして実の両親を亡くし、暫くして尊敬する義兄を亡くし、本編中に恩人であるロナート卿を亡くすなど散々である。ほんと良く良い子に育ったね......

 視野を広げてみると、他の学級でも、そもそも生徒たちの多くが家族に暗い陰を持っていることが描写されている。兄弟を皆失ったエーデルガルト、父から虐待を受けたベルナデッタ、天涯孤独のドロテア、事故で親を失っているラファエル......そんな中でカスパル家族関係で暗い要素をほとんど見せない珍しいキャラクターなのだ。誰よりも家族仲が良好といっても過言ではないのかもしれない。そう私が言う訳は、前回述べた通りカスパルが父を敬愛している描写が多いからである。

 カスパルは彼の死亡時の台詞にも表れているように、戦場での自分の死さえも厭わず、自分を殺す相手を許してしまうような人物。それを大らかだとか心が広いと称していいものか多少の疑問は残るものの、そうでなくとも軍務卿の息子である彼は戦争の無常さや戦いで犠牲がでることを重々理解している。しかしペトラとの支援で彼は「俺が逆の立場だったら絶対許せない」としきりに主張するのだ。私はこれがなかなか呑み込めなかった。実際に事が起こった時、彼は「仕方がない」と受け入れるタイプの様に思えたから。しかしカスパルが許せないと語る訳は、それほどに「父が自分にとって大切な存在である」からだと認識している。自身が超えるべき壁である父が他の者によって討たれる、という事実を受け入れられないという側面もあるのかもしれない。

 

「親父みてえな強さが、欲しいぜ......」

 

 実際にカスパルが家族を、父を失うことが明確に描写されるのは、金鹿及び黒鷲の教会ルートを選んだ際の散策会話。エーデルガルトを主人公らが討ったあと、ベルグリーズ卿が帝国の全将兵の責を一身に背負って首を差し出したと彼の口、およびドロテアから語られる。カスパルが大聖堂に姿を見せるのは金鹿のこの時のみ。以前は「父と戦いたくないのは家族の絆とかは関係ない」と語っていた彼もやはり悲しみを見せる、とても印象的な一幕。「覚悟はしていた」「クソ強い最期、親父にしかできない喧嘩」と彼らしい言葉で父の死を語りながら、「オレ、強くなれてんのかな?」と弱音を吐いてしまう強くなってるよぉぉぉぉぉと抱きしめてやりたい

 

フォドラで一二を争うその実力

 

「君の父親相手に勝てる人なんて、フォドラ中探しても少ないよ」(byリンハルト。カスパルとの支援Cより)

 

 熊を素手で倒すだとか、魔物の方がまだマシだとか、とにかくその実力の高さを作中の人物の言葉によって示されているベルグリーズ卿。でも背はリンハルトの父さんより低いらしいよ上記の通り彼が亡くなる理由は「部下達を庇うため、自ら命を差し出す」というものであり、本編中で彼が敗戦する場面はない。青獅子ルートでは、終盤の散策会話で「親父のいるところだけは負けてねえ」とカスパルが語っており、実際に戦場で顔を合わせなくてよかった、というのは他人事では全くない。彼からは「エーデルガルトとは仲が悪いと思ってた」と言われるも、実際は彼女の側について皇位継承の助けにもなっている。黒鷲、覇道ルートではデアドラを落とした後の同盟の事後処理を任されており、帝国陣容においても信頼を置かれている様が分かる。ダグザ・ブリギット戦役を抑えた将も彼。カスパルは指揮が苦手であるが、父の方は個人としても、一将としても優秀な人物であったのだろう。

 彼がエーデルガルトについて侵攻を良しとした理由は何か。彼がカスパルの特性を更に強調した大人であったとするならば、より強い敵との戦いや過去に類を見ない困難な挑戦を求めていたからかもしれない。若くも皇帝としての素質と途方もない野心を抱えたエーデルガルトの人となりを気に入っていた、というのもあるかもしれない。なんにせよあのカスパルの父なのだから、冷静に、政局を鑑みて......といった理由ではないと思ってしまう、そういうのはリンハルトの父の立ち位置だ。

 

 

父としてのベルグリーズ卿

 

 カスパルが紋章を持たない次男という立場でも腐らずに気持ちのいい正確に育ったのは、親の教育のおかげでもあると私は思っているのだ。とりわけ父の存在はカスパルにとって大きい、今までは「敵わない存在」「あまりに大きすぎる、カスパルにとっての重し」としてベルグリーズ卿を見てきたが、勿論彼の存在がカスパルにプラスに作用したこともまた、沢山あるだろう。

 家を継ぐことが(物語の開始時点で)決まっているカスパルの兄はエーデルガルト曰く「努力もせず、強欲で、ろくでもない人物」であるという。ほんと正直な奴だなそんな兄を持ちながらカスパルは知っての通りの努力家で、なおかつ彼は兄とも仲がいいらしい(少なくとも、兄を引きずり降ろして家の継承権を得たいだとかは微塵も思っていない、兄に何か悪いことが起こるのは嫌だとまで言う)、自力で道を切り開く心構えといい、彼の長所はきっとベルグリーズ卿がカスパルを気にかけ、強く生きていけるように教えたからなのだろう。時には自らの強さをもって、背中をもってカスパルに道を示したのかもしれない。ベルグリーズ卿の領地であるメリセウス要塞は幼き日のカスパルにとっての遊び場であったという、忙しい身でありながらも子供ともよく遊ぶ「いい父」であったのかもしれない。(その割にはろくでもない兄が育ってんぞ! と思わなくもないが、兄のそういった側面にも理由はあると描写されているので、まあ、仕方ないね!)

 ベルグリーズ家とヘヴリング家の付き合いがカスパルとリンハルトの交友のきっかけであるが、ベルグリーズ卿とヘヴリング卿の仲は非常に悪いという。とはいえ本気の不仲であれば流石に息子たちもそう親密にはならないだろう、喧嘩一つない息子たちと違って言い合いばっかりではあるがこちらも腐れ縁の仲だったのだろうと推測する。こっちはこっちでなんだか美味しそうだよねヘヴリング卿もベルグリーズ卿と同様にエーデルガルトにつく立場であり、軍務と財務を同時に抑えたことで皇位継承もスムーズに行われた、二人の間でも何らかの口合わせがあったのかもしれない。

 

 

 もしカスパルベルグリーズ卿と相対していたら、子供の頃のカスパルベルグリーズ卿の会話など、まだ見ぬ彼について思いを馳せ色々と妄想することがある。だが結局我々はベルグリーズ卿の口調一つ分からない。折角これほどに存在感のあるキャラクターが存在するのだから、今後何らかの形で表に出てきてほしいと願うばかりだ。

 

おまけ・・・リンハルトと家族

 

 カスパルは終盤、しかもルート限定とはいえ親を失う展開が用意されている。よくよく考えればなおのこと家族に問題を抱えていない存在がいるのではないか?

 金鹿のヒルダやイグナーツはまぁ......家族の問題とか、そういう側面が薄い方ではある。彼らと並んで目に見える問題が無さそうな黒鷲の生徒と言えば、そう、リンハルト

 特に不自由なく士官学校までやってきて、ストーリーが完結するまでヘヴリング卿含む親族が亡くなった描写も一切ない。ヘヴリング卿は一応「息子を強引に訓練に付き合わせようとしたベルグリーズ卿に激怒する」程度には息子思いである描写も。

 しかし、そんな親を持ちながらリンハルトはというと......

 

「僕は金目のものを家からくすねてきました」

 

 お前さぁ。

 上記は黒鷲、銀雪ルート序盤でのリンハルトの台詞、勿論彼は家と対立しているので理に適った行動ではあるが、なんとも彼のマイペースさが際立つ台詞である。

 恵まれた(他の面子を考えたらそう言っていいと思う)境遇にありながら、そもそもリンハルトは家族に対する情だとかが一切なさそうである。ほんと、そういう事柄で悩んでるのマジで見たことが無い、なんなんだお前。勿論それを薄情だとか言うつもりはない

 リンハルトはカスパルとは違い紋章を持ち、家を継ぐ立場でもあるキャラクターである。しかし、彼の性格を思えばそういった「恵まれた境遇」は寧ろでしかない。政治を嫌い、義務を嫌うリンハルトは貴族の責務、領主としての仕事などまっぴらごめんである。ソロでの後日談からして継承権を放棄する、一部でロストした場合は帝国を出奔して姿を消す。そんな彼からすれば寧ろ何もないカスパルの方が羨ましいくらいで、立場からくる家族の期待などは煩わしいだけだっただろう。

 シンプルに軍務卿と仲が悪い父にも辟易としていたようであるし、彼にも父や家族に対して悪感情を抱く理由はしっかりとあるのだ。尤もリンハルトの場合家族に善も悪もない無感情でも平気で唾を吐きつける真似をしそうなのが怖くもある。

カスパルの抱える陰、彼にとってのダグザ・ブリギット戦役とは

 本ブログでカスパルを語り始めて今日で一週間となる。元より長期的に続ける予定のブログではないのだが、カスパルを推すうえで語りたいテーマはまだ数個残ってもいるので、これまでお付き合いいただいた方々はこれからも是非ともお越しいただけるとありがたい。このここまでで本ブログのPV数はおよそ200を数えるほどになった。とても沢山の数字だと思う。継続して来てくださっている方や、記事に反応をくださる方もいて、ただただ感謝するばかりだ。

 私はカスパルが好きだ。そして、カスパルがまた他の方から愛されている様を見るのが好きだ。本ブログを読んでくださっている方々の中で「私はこの部分はこう思うのですがポン酢さんはどう思いますか」などの質問、「私はこの部分はこう思っています!」という持論、カスパルについて聞きたいこと、語りたいこと、ここめちゃくちゃ分かる、それは違うんじゃないか、カスパルっていいよね、その他色々......何かあればぜひこのブログのコメント欄だとかTwitterの方だとかにコメントをくださると嬉しい。Twitterの方には一応マシュマロもある。カスパルの事を語る怪文を匿名で送ってくれてもいい。なんなら私の見えないところでカスパル語りを展開してくれてもいい。カスパルの輪が少しでも広がることは、私の心からの幸せである。

 

 

避けては通れないペトラ支援と避けないほうがいいシャミア支援

 

 さて、前置きが長くなったがそろそろ本題に入ろうと思う。

 基本的に明るいキャラクターで、その言動一つ一つでプレイヤーや作中の仲間達に笑顔を与えてくれるカスパルだが、そんな彼も大いに悩み、暗い表情を見せることがある。以前書いた主人公との支援の流れも勿論そうだが、彼のそういった側面が最も描写されているのはペトラとの支援だろう。

 ペトラ=マクネアリーは黒鷲の学級の一員であり、ブリギット王の孫娘でもある。フォドラ西方に位置するブリギット諸島はかつて「ダグザ=ブリギット戦役」で帝国と戦い、これに敗退したことで本編の時代には帝国に従属している。その証こそがペトラ、言わば彼女は人質でもあったのだ。

 しかしペトラはエーデルガルトの支えもあって黒鷲の学級にもしっかり馴染み、伸び伸びと学生生活を送っている。癖のある生徒が多い黒鷲の学級の良心でもあり、真面目で勤勉な彼女は仲間からも高く評価されている。

 

「何で、オレと普通に話せるんだ? オレは、仇の息子なんだぜ!?」

 

 しかしカスパルだけは、彼女と親しく話すことができずにいた。

 カスパル・ペトラの支援Cで明かされる衝撃の因縁、先の「ダグザ=ブリギット戦役」でペトラは自分の父を失い、その時に帝国軍を率いていたのがカスパルの父であるベルグリーズ卿その人だった。

 正確にいえば、カスパルがこの事実を知ったのは「ついこの前」だそうなので、それまでは普通に仲良くしていたのかもしれない。この支援でのカスパルは、「元気に訓練を始めようとしたカスパルが、訓練場にペトラの姿しかないのに気づいて声のトーンが下がる」「ペトラに話しかけられたカスパルの言葉の歯切れが悪くどこか戸惑いが感じられる」「一度は彼女に言おうとした言葉を飲み込んで『何でもない』と言い張る」など、彼らしくない言動が大いに出てくる。この支援が解禁される頃には、プレイヤーはようやくカスパルの性格を掴み始めたところだろう、彼の意外な一面に戸惑いを覚える先生は多かったのではないだろうか? 私は一周目を黒鷲でプレイし、カスパル支援会話の中では割と序盤で開かれたこの支援で初めてカスパル=フォン=ベルグリーズという存在を強く意識するようになった。

 

 支援Bでもカスパルの態度は相変わらずで、彼に歩み寄ろうとするペトラに「親の仇とよく一緒にいられるな!」とまで言ってしまう。「逆の立場だったらオレは絶対許せないのにどうしてお前は......」、まるで自分を憎んでくれと請うようなカスパルにペトラは「親同士の因縁は子には関係ない」「ここで自分がカスパルを憎むと、互いの子孫は永遠に殺しあうことになる」と憎しみを否定しカスパルを諭す。

 カスパルはそれでも簡単に割り切ることができずに、ペトラが去った後も一人思い悩む。学生時代のカスパル特有の未熟さが描かれているのがこの支援で、同時にペトラが高潔で優れた人格者であることが窺える支援でもある。割り切れない加害者の息子と無かったことにしたい被害者の娘、戦争でのこととはいえカスパルにとっては非常に難しい問題なのだろう。

 

 同様の問題が描かれているのがシャミアとの支援である。シャミアはダグザの出、ダグザもまたブリギットと共同戦役を組み帝国に負けた身である。シャミアの場合は、彼女自身もその戦争に参加している。カスパルは「ダグザ人であるシャミアとも、彼女が帝国を嫌わないと言うのであればわだかまりなく仲良くできる」と支援Cの段階では言っていたが、彼女が正に戦争の当事者であると知ってその態度は一変する。

 

「オレ、あんたは戦ってねえと思ってたんだ! ダグザと帝国は戦ったけど、オレ達には関係ねえ、だから仲良くできるって......」

 

 支援B、らしくない歯切れの悪さなどから異変をすぐに感づかれ、シャミアに問い詰められたカスパルは自身の動揺の訳をシャミアに話す。親のやったことを自分とは無関係だと思えない点もここで再び描かれ、必要以上に親の行いを背負ってしまっているのがカスパルの陰だということが明確になる。シャミアはというと淡白なもので、「奪った命を生き返らせること以外に責任の取り方などないのだから、わだかまりなど捨てて自分と付き合って見せろ」と言い放つ。多少態度や立場は違えど、ペトラとシャミアの主張は同じ。カスパルは大いに悩むことになる。

 

 

悩みの末カスパルが出す答えは......

 

 さて、ペトラ支援の前に先にシャミア支援の結末について触れていこう。

 シャミアとの支援は上記のCとBを経て、更にB+、Aと二段階の支援が残されている。支援B+では、カスパルがシャミアを庇い瀕死の重傷を負うところから始まるのだが......

 

「確かにオレ、あんたに負い目を感じてたよ。けど、今回のこれは関係ねえ」

 

 代わりに命を賭すことで責任を取ろうとしたことを糾弾するシャミアに、カスパルは「ただ勝手に体が動いてしまっただけだ」と返す。カスパルの性格上その言葉に嘘はない、シャミアは年長者の立場からやはりカスパルの軽率さを注意するが、同時に助けられた事への感謝と、支援Bでの自分の言葉を「意地悪だった」と謝罪の言葉を送った。この支援でシャミアは「私を助けたかったら自分の身も守りながらにしろ」とカスパルに言うのだが、カスパルが正にそれを実現するのが支援Aだ。

 

「今度シャミアさんが危なくなったら、俺も無傷で華麗に助けてやるぜって!」

 

 シャミアから「腕を上げた」と素直に褒められるようになるまでに成長したカスパル、すました顔で冗談のようなことを言ったり的確に賞賛してくるシャミアに振り回されるという珍しいカスパルが見られるのがこの支援A。カスパル持ち前の観察眼でシャミアの動きをよく見て、よく読んで、邪魔にならないように......と努力した結果、互いに安心して背中を任せられる関係になっていたのだ。ついでにシャミアの考えていることまで分かるようになったというカスパルにシャミアは「なら私が君について思っていることを当ててみせろ」と告げ......

 

「オレのこと、仲間として頼もしく思ってて、ずっと一緒に戦っていきたい戦友で......出自なんか関係なく、一生の絆が結ばれた、心で通じ合ってる二人っつーか......」

 

「あっ、これじゃ、全部オレの願望じゃん!」

 

 プロポーズかな?

 少々論理が飛躍した。しかしカスパルはその後この発言を「凄いこっ恥ずかしい」と認識しており、恥ずかしがっているのでやっぱりラブみを感じずにはいられないのが恋愛脳プレイヤーの性である。ドロテア支援の「お姉ちゃん」は、恥ずかしいと思いながら恥ずかしいことを口にしていた。こちらはうっかり言ってしまった言葉が恥ずかしいものだった。似ているようで性質は全然違うでもどっちも良い!!

 一方でシャミアもこの恥ずかしい発言を前にして「だが、あながち外れでもないぞ」と告げる。デレの破壊力が凄い。シャミアはツンデレ、いやクーデレ? とにかく普段のすました雰囲気のままから放たれるデレの威力も魅力のキャラクター、この表情一つ変えず放たれるデレは「このシャミアがスゴい!グランプリ」上位入賞も狙えるのでは?

 後日談では二人は傭兵団を結成、正義の傭兵団として圧倒的な実力をフォドラ全土に響かせたという。「カスパル、旅に出る」シリーズと同じように、カスパルが騒ぎを起こし、シャミアがそれを収め、その場の皆が笑顔になるという展開がここでも描かれ、結婚の有無は明らかではないがまあそんなことはどうでもよく二人はカスパルの願望通り良き相棒となれたのだろう。

 

 

 カスパル答えだしてなくない!?

 この支援では結局カスパルが悩んだその先の答えが描かれていないのである。負い目とは関係なしに勝手に体が動き、それを経てシャミアがカスパルへの態度を軟化。カスパルカスパルでシャミアの言葉を愚直に受け止め成長、晴れて二人は良き相棒に、という流れ。B+からAの段階でカスパル「負い目」などという余計なことを考えている場合ではなくなった、そんなことに頭を割いていては強くなれないので忘れてしまったのだろう。そして、きっとそれが良かったのだ

 シャミアからすれば、カスパル初めから悩む必要などなかった答えを出す必要などない、というのがこの支援の正答だったのだ。

 

 ならペトラとの支援では......?

 

 

「あなた、父の仇、その子供。だから......殺します」

 

 ペトラとの支援A、カスパルはぎこちないながらもペトラに自ら話しかけ、世間話を持ち掛ける。支援Aが解放されるのは第二部、共に死線をくぐり、ある程度は仲も良くなった証だろうか。

 しかしペトラはカスパルに剣を向ける。

 嘘をつけないカスパルは、ペトラの「気にしない」という言葉を信じ切っていたのだろうか、しかしペトラはカスパルに語る。カスパル楽天的なのはおかしいと。お前の父に自分の父は殺されたのに、憎さがない訳がないだろうと。この剣があなたを貫く、それがわたしの願いの片方だと。

 

「願い、もう一つ、あります」

「共に、戦う、生き延びる、願いです」

 

 しかしペトラは、同時にカスパル仲間として好いてしまってもいたベルグリーズ卿を誇りに思い笑うカスパルを許せないが、誰よりも努力するカスパルを殺すこともまたできないと......

 

オレを殺さないで良かったって、思わせる。絶対だ。誓うぜ、ペトラ」

 

 彼女の愛憎入り混じった言葉を受け、カスパルは「その剣が今オレを刺さないのなら、オレと共に生きる願いの方が大きいと信じていいんだよな」と聞く。そしてペトラを賞賛し、誓いを立てるのだった。逆の立場ならオレはきっと許せないのに、ペトラは凄い奴だと。その言葉に、自分も応えると。

 

「これから、すべて、伝えます。悲しみ、憎しみ、喜び、愛おしさ、すべて」

 

 ペトラはカスパルの誓いに喜び、今まで心の壁を作っていたのは自分の方だったと語る。二人は本音で語らいあうことを誓い、この支援は終わりを迎える。

 

 扱うテーマが重いだけあって、この支援はカスパル推しの身から見てもカスパルの支援の中ではトップクラスの内容だと思う。何より、初見時には「今までとは一転してペトラが憎しみを露にする」というシーンで度肝を抜かれたのだ。

 カスパルは、父のことを深く敬愛している。「親子の絆なしに恐ろしい」と言いつつ、父を失った時はやはり落ち込みを見せるし、必要以上に父の罪を背負ってしまうのも、父への憧れや絆、誇りから来るものだと思う(敢えて「罪」と表現するが、戦争の結果による生死自体が仕方がないことだし、カスパル本人も父の行いを罪ではないと理解しているに違いない)。そんな彼が父の事を誇って笑うのは、当然ペトラにとっては複雑だ。許せない思いと同時に抱いてしまった敬慕、ペトラの混乱が遂に表に出てしまうのが支援A。彼女が何を思って剣と思いを突き付けたのかは分からない、しかし彼女が思いを晒さなければ二人の間に壁があり続けたのは明白なこ

 

 カスパル答えだしてねぇな!!!!!

 

いや、まあ、そうなのだ。カスパル本人にはどうしようもないことなのであるこの壁はカスパルを加害者、ペトラを被害者と敢えて表現して言うならば、結局この関係がどう転ぶかも被害者次第なわけで、加害者が被害者に何をしても被害者の気持ちがついてこなければ意味がない。ペトラが本当に憎しみなどもっていなかったのだとしても、もっと直接的に本音でぶつからなければカスパルは永遠に負い目を感じてしまうし、それに、やっぱり何の憎しみもないなんてことは、難しい。許さないならば許さないでいい、ペトラにしてもシャミアにしても、カスパルは相手の側からアクションが無ければ身動きを取れないのは仕方がない。

 一応悩んで自分で答えを出せた主人公との支援の違いは、相手在りきだと言うところ。大大と「答えだしてない」と書いたが、この二件においてカスパルが出した答えを敢えて明確にするならば「ペトラの思いに応える」「シャミアの思いに応える」といった感じになるのだろう。

 加害者とは書きながら、どうしたってカスパル本人は何もしていない。まだ本人に非があれば多少話は簡単だったとも思う。

 

 

カスパル・ペトラ支援のあれこれ

 

 初めて見た時は冗談抜きで泣いてしまった、今でも見るたび目が潤むペトラとの支援。感動という面においては上記の通りトップクラスの名作だと私は思っている。そもそもが、この「親世代の因縁」という設定はある意味で劇物なのだ。支援会話の感動指数をランキングで争うならドーピング違反と呼べるような、とんでもない劇物。代償にこの二人は「士官学校時代ほぼ丸々、というか五年後までずっと仲がぎこちないまま」ということになる。

 一部と二部で五年間空くというシステムの残酷なところで、例えばアネットメルセデスの青獅子仲良しガールズは支援Bで喧嘩をしてしまい、そのあと二人を食事に誘っても気まずそうな会話が展開される。仲直りする支援Aが解放されるのは五年後の第二部だ。こんなひどい話があるか一応支援CやBは一部でも二部でも解放可能なものがあったりでこういう悲劇を幾分和らげることができたりもするが、それはそれこれはこれである。そしてその仕様のせいで五年後173㎝カスパルがお姉ちゃん呼びを強要される喜劇が発生したりもする。カスパルとペトラの支援に関しても同じで、二人の心の壁が取り除かれるのはどうあがいても五年後なのである。フェルディナント、ドロテアの関係は当初はドロテアが一方的にフェルディナントを嫌っているが、支援をこなせば一応舞踏会で「フェル君で妥協」する程度には関係も軟化する。同様にコンスタンツェがフェルディナントに激しい敵意をみせる両名の関係においてもフェル君ばっかりだな支援Bの開放が確か一部のラストであったため、ギリギリ多少軟化はする。だがカスパルとペトラの支援はAまでいってようやく心の壁崩壊、同じ学級なのにあまりに悲しい。ここに戦闘会話があってペトラがカスパルに憎悪をぶつけていたりしたらもう心が折れていた、本当になくてよかった。私は見たかったとか言わないの、ペトラはきっと戦場に私情を挟まない子だよ。

 また、割かし重要な設定にも思えるこの因縁の話、しかし二人の支援を見なければまず気づかないだろう程に表には出てこない設定でもある。初めに黒鷲以外を選んでなまじかじる程度に二人のことを知っていたプレイヤーは二周目以降で黒鷲をプレイしたりしてさぞ驚いたのでは? カスパルスキーとしてはカスパルの魅力を大いに掘ってくれる名支援であると思うので、知らない人には是非とも見てもらいたいものである。その割には全部ここでネタバレしちゃったよね。

 

 最後に、二人のペアエンドの後日談では、ペトラが祖父から王位を継ぎブリギットの帝国への従属状態の解消を宣言し、フォドラやダグザとの友好的な交流に尽力したと書かれている。その大いなる助けとなったのがカスパルその人であり、彼はなんとペトラと結婚したと記されているのだ。現地の民は当然反発するが、彼の真摯な姿勢と楽しそうなペトラの姿を見て徐々に態度を軟化させたのだという。ここでの「共に躍動する女王の楽しそうな姿」という文がエモいポイントであり、(座学はともかく)共に武において真面目で真剣な姿勢を持つ二人は、親のことが無ければきっとすぐに仲良くなっていたのだろうと思わせる。

 にしても結婚とは中々に凄い。先ほどは茶化すまいと記さなかったが......

 

「これから、すべて、伝えます。悲しみ、憎しみ、喜び、愛おしさ、すべて」

 

 ラブい。

 なんとこの時点でペトラはカスパル恋愛的な意味で惚れてしまっている(可能性がある)。そもそもペトラは支援会話の段階で相手への好意を明確にする場面がそれなりにあるのだ。

 ヒューベルトとの支援では彼に聞こえない様に「いずれエーデルガルトではなく自分を選ばせ、ついてきてもらう」と決意を露にしており、アッシュとの支援では本人に「戦争が終わったら共にブリギットに行こう! え? 騎士になりたい? じゃあブリギットに騎士団作るよ! 私はブリギットの王! アッシュは私を守る騎士! あなたの夢も叶うし問題ないでしょ?」と押し切ってしまう。この支援でのアグレッシブさは本当に凄い、必見。クロードの支援では「誰かは秘密だけど自分に相応しい婿見つけたよ! その人しかありえない! だから断られて逃げられたら縛り上げて連れて帰るよ!」......お国柄かなぁ? その秘密の相手が断る気がなさそうで本当に幸いである。

 話を戻そう、この最後の言葉にわざわざ「愛おしさ」というフレーズを入れているのは恋慕を匂わせる為なのは明白。兄さん、ペトラは親父の仇の息子に恋をしているよ。ブリギットに渡ったカスパルにはそれはそれは数多の苦難が待っているだろうが、遂にはそれを乗り越える二人......そんな絵に思いを馳せるのも悪くないだろう。