カスパル=フォン=ベルグリーズについて語りたい

このブログはファイアーエムブレム 風花雪月というゲームに登場するカスパル=フォン=ベルグリーズというキャラクターの限界オタクである一プレイヤーが、推しであるカスパル=フォン=ベルグリーズについてただ語るという、それ以上でもそれ以下でもないブログです。次第に他のことについても語るかも。

カスパル推しならアッシュもすこれ!もう一人の親友について語りたい

 風花雪月の生徒キャラクターが支援を組める相手の数は、バランスがよくなるように大体一定である。級長やその従者ポジションであるヒューベルト、ドゥドゥ―は数が少ないが、それ以外の面々は基本自学級の他の生徒全員に加えて他学級から4人程度、そしてどの学級にも属さない面々から二人ほど。キャラクターによっては更にDLCのキャラクターがそれに加わる。自軍の異性のキャラ全員に加え同性のキャラ一人と支援Aまで組むことができ、他の学級の生徒に関しては大体支援Aまで組める異性のキャラ三人と支援B止まりの同性のキャラ一人という形。フェリクスはディミトリ、シルヴァンの二人の自軍同性と支援A及びペアエンドを迎えられる、そのシルヴァンの方は少々特殊で沢山の女生徒と支援を組めるが支援Aまでいくのはごく少数など、挙げていけば少々の差異はあるのだが、大体は上記の通りだ。

 原則、支援A及びペアエンドを迎える組み合わせは大体異性同士だ。全生徒、自学級に最低一人の同性と支援Aやペアエンドを組める相手がいるが、逆に言えば他学級の同性と支援Aやペアエンドとなるコンビは本当に少ない。

 その一つがエーデルガルトとリシテア、共に紋章を二つ持つ身であり同じ背景を持つもの同士として、支援会話においてもその境遇に則した話が展開される。

 その一つがエーデルガルトとコンスタンツェ、ヌーヴェル家復興を目指すコンスタンツェにとってエーデルガルトが如何に重要な存在であったのかは想像に難くない。

 その一つがメルセデスとコンスタンツェ。二人は昔馴染みでありコンスタンツェはメルセデスを「お姉さま」と慕っている、ペアエンドが無い方が不自然である。

 

 そして、その一つがカスパルとアッシュである。

 

風花雪月の光!? ペアとしてのカスパルとアッシュについて知ってほしい!

 

 クロードとバルタザールも他学級ながらペアエンドがある同性同士の組み合わせ、上記の三例に比べ関係性は薄い二人だが一応「バルタザールの初恋がクロードの母親」という話が二人の支援の肝となっている。

 だがカスパルとアッシュはどうだ、なんにもないのだ。二人は士官学校で正真正銘初対面。支援で語られる話というのも「泥棒が出たから二人で捕まえようぜ!」「泥棒かと思ったら猫じゃねぇか!」「猫可愛いな! ガッハッハ!」くらいのもんである。雑が過ぎる

 要は、二人には因縁も関係も本当にない。全ての同性ペアエンドの中で一番関係性が弱いまである。フェルディナントとローレンツのような、似た者同士支援ですらペアエンドはないのに。外伝で一緒になるドロテアとイングリットの支援ですらペアエンドはないのに。

 しかも、だ。あろうことかカスパルとアッシュには食事会話がある。グループ課題会話もある。なんだこの厚遇。これらの会話がカスパルに用意されている相手はリンハルトとアッシュだけだ。幼馴染とアッシュだけだ

 なぜ二人の絡みが執拗に描写されているのか、私は初めに「製作スタッフの癖明らかに特定層を狙い撃って作ったものだろう」と考えた。今でも間違いだとは思っていない。顔も身長も、士官学校時代の彼らは可愛い少年系。第一印象でどちらかに惚れこんだ人はもう片方にもハマる可能性が高い

 しかしカスパルとアッシュ、彼らの事を知っていくとなるほど仲良くなるのも自然なことだと思えてくるのだ。カスパル推しならアッシュもすこれ、アッシュ推しならカスパルもすこれ。今回はカスパルにとっての「もう一人」の親友に着目して話をさせていただく。

 

 

「その盗人! オレがとっ捕まえてやる! アッシュ! お前も協力しろ!」

「はい! 二人で泥棒を捕まえて、しかるべきところに突き出さないと!」

 

 支援Cの導入、騒ぎを耳にしたカスパルにアッシュが「聞いた話によれば泥棒が出たらしい」と告げる所から始まる。とってもスピーディな導入、一切の摩擦もないので二人は普段から仲がいいことが窺える。

 しかしカスパルはアッシュの「捕まえる」という言葉に反応し(君もとっ捕まえるって言ってたよ?悪を成敗するために見つけ次第斬ることを主張。一応「修道院に盗みに入る手練れを斬らずに捕まえるのは難しい」という主張であり、(この段階では)「悪い奴だから問答無用で斬ろうぜ!」という話ではない。アッシュは「犯人にも事情があるかも......」と反論、カスパルの言っていることが理解できないといった反応を示す。

 ぶつかりあう双方の正義、過激派カスパルと穏健派アッシュの口論はエスカレートし、しかしアッシュの言葉が難しくカスパルは理解できない。「喧嘩で決めようぜ!」「それはおかしい、野蛮なこと言ってないでもっと話し合いましょう!」「そんな悠長なこと言ってる場合か!」と言いあっているうちに泥棒が捕まったという話が聴こえてちゃんちゃん♪ という話。この時カスパル悔しがり、アッシュは「捕まったんならよかったじゃないか」とカスパルを諫めている。ここに関してはアッシュが全面的に正論を言っているように見えるが、自分で身をたてないといけない立場であるカスパルが少なからず自分で手柄を立てることに拘っていることが分かるシーンでもある。

 

 アッシュもカスパル同様正義を大事にする人である。しかし彼の掲げる正義はカスパルのそれとは少しばかり違う、その対比が強調されるのがこの支援C。アッシュの正義は「許す」という側面があり、彼の正義は彼の過去に起因している。

 幼くして両親を失い、兄弟を支える長男という身であったアッシュはかつて盗みに手を染めてしまったことがあった。ある日盗みがバレてしまったアッシュは、しかし彼が盗みに入った先の主であったロナート卿によってその人生を救われる。そんな背景もあってアッシュは他者の盗みなどの悪事に際して、何よりもその理由を求めるようになったのだ。

 今のアッシュは紛れもなく良い子であるのだが、今回のカスパルの反応からするとアッシュの過去をカスパルが知った時、少々面倒なことになりそうだ。少し不穏な影を落としつつ、続く支援Bを見ると......

 

「うにゃっ!」

 

 ほのぼのだぁ!!

 第二部になって解禁される支援B、成長したカスパルはアッシュから「また泥棒が出た」と聞くと「四の五の言うのは後にして、今度こそ協力して捕まえるぞ!」とアッシュとバディを組む。素早い相手に苦戦するも、二人は見事な連携で泥棒を捕まえることに成功! その正体こそが......

 

「にゃあ」

 

 猫だった。

 猫の処遇をどうするか問われたアッシュは「君は前、見つけ次第斬ると言ってましたよね?」とカスパルに言う(意地悪やからかいで言っているのかは少々微妙な所である)。カスパルはそれに対し「今それ言うかよ、根に持つんだな」と少し口をとがらせ、「じゃあお前は早く事情を聞いてくれよ! 猫の言葉が分かるならな! ガッハッハ!」とカウンターパンチ。こちらは完全に嫌味、というか仕返しである。カスパルがこういったウィットに富んだことを言うのは非常に珍しい。ほんと、うまく言葉に表せないのだけど、私はこのセリフがハチャメチャに好きである。

 アッシュは怒ったりはせずにお互い打つ手なしで参ったな、などと言っている。そうこうしているうちにこの猫は二人から逃げてしまうのだが、二人は「次に捕まえたらどう対処するのか、もう考えてある」と告げ、どちらの方がうまくできるかの対決みたいな形になって支援Bは終わる。カスパルの方が乗り気であるため目立たないが、地味に「負けませんよ」と対決感を先に煽っているのはアッシュの方だったりするのも注目ポイントだ。

 

「ほら、こいつを食え。お! がははは、いい食いっぷりだな!」

「やれやれ。お前は食欲旺盛だね。まだおかわりがほしいの?」

 

 支援A、二人がそれぞれ例の猫に餌をあげているシーンから始まる。

 しょっぱなから破壊力の塊である。

 第二部の二人は身長も伸び、心だけでなく身の方もド強く成長、何が言いたいかと言うと超イケメンである。ああそうだ、猫が羨ましいよなぁ!

 当方カスパル推しではあるが......うーん......やはり、この冒頭の二人の餌やりの台詞は、アッシュの勝ち!!

 アッシュが「お前」なんて使うシーン他にはないんだ。アッシュカップtier1猫!

 

「やれやれ。お前は食欲旺盛だね。まだおかわりがほしいの?」

 

 堪らん!!

 このギャップが堪らんのである。分かる? 分かるよね! カスパルカスパルらしさある台詞も非常にいいけども! 「お前」と「だね」や「の?」といった言葉遣いのマリアージュが、これは、凄いテキストだ。考えた人は天才だ。そして優しい声も合わさって

そろそろ本題に戻れ

 

 お互い猫に餌をやっていることは他言していなかったようで、暫くして二人は初めて鉢合わせ、同じ結論に至っていたことを知る。

 

「何だか、僕たち似てますね」

「同じ正義を志す者どうし、根っこは同じなのかもしれねえ!」

 

 そして二人が案外似た者同士であること、同じ正義を志す者であることについて本人たちが言及する。これからは二人で猫の世話を協力することになって一件落着......

 

「ところで、カスパル。君の持っているお肉......」

「げげっ!」

 

 しかしカスパルの肉があまりに新鮮で綺麗であるために、カスパルはアッシュから肉泥棒の嫌疑をかけられてしまう下手下手なカスパルの口笛が愛おしいカスパルはわざとらしくアッシュの用意した飯へと話をそらすが、強い正義感を持つアッシュは全く逃がしてくれない。カスパルもまさか盗んだわけではなかったが、「厨房のおっちゃんと喧嘩して、勝ったからもらった」という真相はやはりアッシュにとっては信じられないもの。カスパルの言い分は「喧嘩はあっちが売ってきた。オレは猫の為に肉を賭けさせた」。これがそのまま通るかは微妙なところであったが、何より猫が肉を喜んでいるためアッシュは、今日のところは不問にするのだった。

 

「ふふ、可愛いですね」

 

 アッシュ、猫にしっかり心を奪われている。

 

 一応支援のテーマは「正義」だったりするのだろうか、しかし支援B以降はなんというか、急激に話が緩くなる。Aまで掘ってもここまで「ほのぼの」「可愛い」しかない支援会話もそうはない。一歩歩けば暗い話にぶつかる風花雪月においてこの支援会話は貴重な癒し要素の一つだろう。まずシンプルに猫の声が可愛い。うーん、やっぱりこの二人関係のスタッフ、ちょっと趣味が過ぎる。素晴らしい、もっとやれ。

 

 

支援会話以外でも二人は......

 

 先述の通り、二人は支援会話以外でも食事やグループ課題で専用会話が用意されている。一方でここまでしているのに戦闘会話はない。ここが興味深いポイントであり、スタッフはカスパルとアッシュをとにかく「光のコンビ」として描きたかったのではないだろうか。例えばアッシュの盗みの過去はカスパルとアッシュの正義の対比をもっと深く描くのにもってこいだったはずだ。しかしカスパルとアッシュの支援ではシリアスな要素を可能な限り削ぎ落しているカスパルとアッシュに関してはただ明るく、仲の良さだけを強調しよう、そう決定したスタッフの心意気を私は大いに支持したい

 支援以外の各種会話では、全体的に一部では押せ押せのカスパルに若干押され気味のアッシュ、二部ではアッシュの方がむしろ強気で場合によってはカスパルが若干押され模様、といった描き方で統一されている。支援会話でもアッシュがカスパルに強気に迫る支援Aは印象的であり、アッシュの成長を随所に感じさせる作りになっている。

 

「僕とカスパルが力を合わせれば、怖いものなしです!」

 

 二部のグループ課題パーフェクト時のアッシュの台詞である。彼らが如何にベストパートナーであるか、それを本人たちも自覚している様子がここに表れている。

 

 

結局どこが似ているの?

 

 カスパルとリンハルトが正反対の幼馴染として描写されているのに対し、カスパルとアッシュは「似た者同士の友達」として描かれている。一見反対だが細かいところで似ているのがカスパルとリンハルト、割と似たところがあるが細かいところで違うのがカスパルとアッシュという対比である。

 具体的には「正義感の強い所」「明るくフレンドリー、人懐っこさのあるところ」「背格好」「嘘が嫌い」「よく食べるところ」などなど。ついでに年齢も同じ。特に食事量に関しては五年後になってから、「意外とお前もよく食べるよな」とカスパルから言及されている。こんな所にもカスパルの妙な鋭さが表れている。

 二人が仲良くなった、そのそもそものエピソードは本編中には描写されていないが、これまであげた二人の特徴を思えば出会って短時間で意気投合するのも不思議ではない。二人の後日談ではカスパル、リンハルトのそれと同様二人で旅に出るのだが、その目的は「世直し」とされている。ここでも「事件に首を突っ込み大騒ぎに発展させるカスパル」と「何事も穏やかに事を収めようとするアッシュ」と記され、同時に「正義を信じる者同士、将来相棒であった」とも書かれている。

 カスパルとアッシュの関係性自体は支援Cから支援Aに至るまで、きっと後日談に至るまで、一切変化が無いカスパル・リンハルトのそれ以上に変化が無いように見える。暗い問題にあまり深く切り込まない、そんな二人の支援もまた、他のペアにはない良さがあると、私は思っている。

唯一無二の幼馴染、リンハルトとカスパル

 カスパルは、正義感が強い。カスパルは、貴族の次男坊である。いくつか挙げられるカスパルの構成要素、その中でも一二を争うほどに重要なのは、やはり幼馴染の存在。リンハルト=フォン=ヘヴリングはカスパルの幼馴染である。寝る事と紋章学が好きで、争うことが嫌い、汗にまみれた努力が嫌い、そもそも血が嫌いという男。どこかしらカスパル正反対に思える一方で、自由が好きで、マイペース、「貴族らしからぬ貴族」という点では彼と似ているとも思える男である。

 しかしリンハルト、カスパルとの喧嘩や鍛錬にはほとんど付き合えないしいつだって眠っていたいリンハルトにとって騒がしいカスパルは邪魔なはず。彼の趣味は大体一人で完結するし、釣り位なら一緒に出来るかもしれないが、カスパルが釣りを嫌わずとも彼の釣りの腕前がいいわけがない(騒いで魚を散らすに違いない)ので釣果を求めるなら一緒でないほうがいい。リンハルトが釣りに釣果を求めないならそれはそれでなおさら近くにカスパルを置かないほうがいい。おまけにカスパルは紋章を持たないためリンハルトの研究対象にもなれない。

 リンハルトに、カスパルは必要ないカスパルにもリンハルトは必要ない。それが二人を客観的に見た私の結論である。

 しかし二人は親友である。これは揺るぎない事実だ。

 

黒鷲二人の不思議な関係について語りたい

 

 これをテーマに、本日も推し語りをしていこうと思う。

 

 

 リンハルトとカスパルの趣味や性格はどこまでも交わらない。例えば二人が士官学校で初めて出会ったなら、そう仲良くなることもなかったと思うのだ。だから二人は幼馴染なのだ。

 カスパルが軍務卿の息子なら、リンハルトは内務卿の息子。二人は昔から家族ぐるみの仲だったようだ。しかし二人の父の仲は険悪、争いや政治が嫌いなリンハルトはその様を見て辟易としていたに違いない(もしくは二人の様子から政治などを嫌うようになったのかもしれない)。なにはともあれ、息子の二人はたったの一度の喧嘩もない。赤の他人から仲良くなることのない二人でも、一緒に居てみれば案外悪くなかったのかもしれない。お互い自由を好み、他者から干渉されることを嫌う方だカスパルは人の性格をそのまま受け入れるタイプであるし、リンハルトはめんどくさがりなのでわざわざカスパルの欠点をしつこく追及しない。そしてカスパルはウソを嫌い、リンハルトはウソをつかない。多少の騒がしさに目を瞑れば、カスパルの傍というのはリンハルトにとって案外悪くない環境だったのかもしれない。

 二人の腐れ縁は成長しても続く。二人は同じ年に士官学校に入学した。性格こそ違えど、二人ともなかなかの問題児だ、エーデルガルトも彼らの扱いに頭を悩ませたに違いない。黒鷲の学級を選ぶと、挿入されるムービーの至る所で幼馴染である彼らの年季の入ったクスリと笑えるやり取りが楽しめる。各種課題や食事でも専用会話が用意されており、そのどれもが、特別ではないが「彼ららしい」と思わせる名文だ。

 そんな二人の支援会話も、やはり彼ららしさに溢れている。話をしている途中でめんどくさくなって話すことをやめてしまうリンハルト、相手の話を聞かずにこうと決めたらこう! と譲らないカスパル、支援Bでようやくリンハルトの話に耳を傾けるようになるが、今度はリンハルトを強引に鍛錬に付き合わせてしまう。結局リンハルトは逃げてしまうが、普段の彼を思えば少しは付き合ってるだけ凄い。

 支援Aでは陰ながらカスパルの挑戦を見守り、彼の勝利を喜ぶリンハルトや、カスパルにストレートに褒められて照れを見せるSレアリンハルトが見られる。リンハルトが照れを見せることは滅多にない(寧ろ恥ずかしげもなくとんでもない言葉を吐いて相手を照れさせたり困惑させるのはリンハルトの常である)。リンハルトカップtier1カスパル爆誕である。以前も軽く触れたが、支援の最後ではカスパルがリンハルトに「一生争わない約束」を求め、リンハルトは代わりに「共に生き残る約束」なら交わしてもいいと言う。後日談ではいずれのルートでも二人共にフォドラ中、世界中を旅することになる。めんどくさがりでベルナデッタほどではないが出不精のイメージのあるリンハルトが旅に出るという後日談は中々に衝撃的である。

 

 

最初で最後の喧嘩

 

 しかし、支援Aが成立するのは二部になってから、カスパルとリンハルトが道を違った場合、二人は争うことになってしまう。風花雪月がプレイヤーの心を惹きつけてやまない理由でもあり、最も残酷な仕様、「縁深い者同士の対決会話」がカスパル、リンハルト間にも用意されているのだ。二人について語るのであれば、この会話は外せない。寧ろ最重要と言って過言ではない。

 帝国に与するシルヴァンにイングリットは激情をぶつける。帝国につきながら友と戦う覚悟を固められないラファエルをイグナーツは敵の立場から叱咤する。ヒルダはマリアンヌの決断を優しく受け入れる。アネットとメルセデスは互いに許しを請わず、断腸の思いで刃を向ける。

 この戦闘会話には、それぞれの在り方が色濃く表れる。涙なしでは見れない物も多いだろう。

 では、カスパルとリンハルトの戦闘会話とは一体どういう内容なのか。

 

「リンハルト! お前とは、敵味方になっちまったな......」

「ああ、そうだね。あまりの残念さに涙が出てくるよ」

 

 あっさりしたものである。

 カスパルの第一声がもう、焦りや怒りなどの感情とは無縁である。語尾にほんの少しの寂しさを感じさせはする......これは、明らかにいずれくる幼馴染との敵対を覚悟していた武人の台詞である。

 それに答えるリンハルトはなおの事さっぱりとしたものである。カスパル以上に感情の揺らぎが一切見えない、泣いたっておかしくない状況であるのに言葉通りに涙を流す彼が全く持って想像できない。

 

カスパル、知ってるかな? 僕らが喧嘩するのは、これが初めてさ」

「! そういや、そうかもなぁ。最初で、最後の、喧嘩、か」

 

 そうしてリンハルトは、あくまでも冷静にカスパルに語り掛ける。カスパルはハッとして、やはりリンハルトとは違い言葉に寂しさをにじませる。しかしリンハルトが「初めて」と言葉を留めるのに対してカスパルの方は明確に「最後」と言い切ってしまう

 支援会話でも、リンハルトはカスパルに「生き残ること」を約束する。カスパル以外に対しても、リンハルトは「生きていてほしい」のである。戦場で命を散らすことを理解ができないことだと語り、人の死を尊ぶこともリンハルトは嫌う。きっとリンハルトは、この戦の場においてもカスパルに死んでほしくはないのだろう。

 しかしカスパルはどこまでも武人で、この「喧嘩」で自分かリンハルトのどちらかの命が尽きるのだと覚悟を決めてしまっている。そうして始まる戦いは、カスパルが心を躍らせるような「喧嘩」とは呼べないものだったろう。勝者となるのがどちらか、それはプレイヤーの選択次第。どちらにせよ、この瞬間に二人の腐れ縁は終焉を迎えるのだ。

 二人の性格はやはりどこまでも交らない。互いの決断を尊重する二人だから、恨み言の一つもない。お互いのことをよく知る二人はこの結末を「仕方がない事」だと割り切れてしまうから、必要以上に悲嘆することもない。このあっさりとした二人の戦闘会話は、どこまでも二人の在り方を表している。他の組み合わせではそうそうない、唯一無二の味わいを得られるだろう。

 

リンハルトがカスパルへ向ける思い

 

 先述の通り、後日談では二人がフォドラや世界を股にかけて旅をしたと記されている。リンハルトが自ら旅に出よう、などと言い出すとは考えづらい、きっとカスパルの旅に彼がついていく形で、若しくはカスパルの誘いに彼が乗る形で旅は始まったのだろう。

 敵対する道を二人が歩んだ時、リンハルトはカスパルに「これが初めての喧嘩」だと告げる。リンハルトにとって、自身が彼の喧嘩に付き合えないことがコンプレックスだったのかもしれない。リンハルトは、カスパルに何かを与えることができない。カスパルは、ふとした拍子にどこかへ飛んで行ってしまうような嵐のような男である。その手を繋ぎ留めておけないことは、他でもないリンハルトが一番分かっているのだろう。

 カスパルからリンハルトへ向ける感情の、何倍も、リンハルトからカスパルへ向ける感情は重いものだと私は思っている。積極的に他者と関わることのない、不躾な言葉で近づくものを傷つけてしまうリンハルトにとってカスパルの存在はきっと貴重だったから。切っても切れない腐れ縁は、その実いつでも切ることができた縁でもあったはず。それでも斬れない絆になるまで保ち続けられたことが、その何よりもの証なのだろう。

 

 最後に私が特に感慨深いと感じたやり取りを紹介したい。

 カスパルとリンハルトの食事の特殊会話、支援Aを達成している時にリンハルトは「明日にも食卓を共にできなくなるかもしれない」と口にする。カスパルは「気持ちは分かるけど、もっと前向けよ!」とリンハルトを鼓舞する。みんなで生き残って、また飯を食おうカスパルのこのセリフは、リンハルトが約束に乗せた切なる願いをカスパルがしっかり受け取った、その表れなのだろう。

一生好きだ!カスパルにとっての主人公とは?

 ファイアーエムブレム風花雪月の主人公は、士官学校の教師である。所謂マイユニットで、デフォルトネームはベレト、及びベレス。勿論生徒たちにとってとても大きな存在であり、主人公が担任を担当しなかった学級の生徒たちにとってもそれは変わらない。カスパルはというと、他の生徒たちと比べて比較的依存度は薄いようにも思える。例えば紅花の章で五年後再会した際には「俺たちは翼を得た!」と喜んでくれるが、反対に彼が主人公と敵対した際の戦闘会話は「あんたとエーデルガルトは分かりあえると思っていたが、そうはならなかった」と少し残念そうに語るのみ。エーデルガルトの道を行くカスパルエーデルガルトの正義に殉じる道カスパルであるため、先生の存在は自分以上に「エーデルガルトに必要な存在」として見ているのだと思われる。「先生がいなくなってからのエーデルガルトはめちゃくちゃ荒れていた」という恐れ知らずの発言もそれを示している。それはそうとこんなこと言えるカスパルほんと怖い。

 前回触れた女神の塔イベントでは「先生を見かけたから追っかけてきた」、紅花ルート分岐直後のイベントでは「先生が走ったからつい追っかけてしまった」、考えるよりも前の段階でカスパルが先生を求めている描写はあることにはある、だが彼の女神の塔イベントは他の生徒たちと比べてあまりに甘さに欠けるものであるし、銀雪の合流の時にはあろうことか先生(及び仲間)とかわした約束のことをすっかり忘れてしまっている。流石にどうかと思う。元よりカスパルはどちらかというと一人で生きていけるタイプなのだろう、先生がいたら嬉しいけど、先生がいないだけで足元がぐらつくような脆さはない、それがカスパルなのである。そもそも先生と共に過ごした時間は僅か一年程度なのだから異常に先生にクソデカ感情をぶつけてくる生徒よりはその方が自然な気もする。

 

 とはいえ、カスパルと先生の二人だけで展開される支援会話ではそれなりにカスパルにとっての先生が大きくなっていく過程が見られる。本日のテーマはこちら。

 

カスパルと先生の支援会話について語りたい

 

 ずばりそのまんまである。主人公との支援というのは、基本支援相手の生徒のキャラクター性をより掘ってくれるものに仕上がっている。ストーリー上では主人公は言葉を話すことが無いので、生徒同士の支援会話と比べてより重点的に対象の生徒を掘ってくれるのだ。賑やかで明るい彼らしさが目立つカスパル支援会話において、先生とカスパルのそれは珍しくもシリアスベースで展開されていく。早速その内容を追ってみよう。

 

 

「何でだよ、先生! オレもあんたも悪くねえだろ! ほっといたら、子供たちが危なかったかもしれねえんだぞ!」 

 

 支援Cでは主人公が怪しい人間を観察しているところにカスパルが合流するところから始まる。主人公の話を聞いたカスパルは早速怪しい人間を捕まえようとするが、主人公は「様子を見よう」とカスパルを諫め、カスパルはそれに反発。問答を繰り返すうち、怪しい人間のいる道の先に子供の集まる広場があることに思い至ったカスパルがいよいよ飛び出すと、怪しい人間が自決してしまうという話。その後カスパルはセイロス騎士に「君のせいで自決した人間から彼の組織の情報を落とすことが叶わなくなった」と責められるのだが、カスパルは自身を庇う主人公に上記の台詞を吐いて走り去ってしまう。

 カスパルが飛び出したのは、なんだかんだ言って「子供に危険が及ぶかもしれない」と思い至ってからのこと、何も考えなしに飛び出したわけではないことが描写されている。その後今回の件でカスパルは思い悩むことになるのだが、少なくとも間違っていると思うことは間違っていると臆せず言えるカスパルはとても素晴らしいと私は思う。カスパルは第二部でもとある場面で主人公に「それは違う」と物申す場面があり、「自分の正義は譲れない」という彼の性格が強調される場面として印象に残っている。

 しかし、何はともあれ第一部のカスパルはやはり未熟な所が目立つのだ。思えば初期値の低さもそういった面を表しているのかもしれない。エーデルガルトからは「目を話すべきではないトラブルメーカー」と扱われているし、ヒューベルトやフェルディナントなどの支援会話でもそういった面は指摘されている。カスパルが今度の件で「自分に非があったかもしれない」と考え直せるのは五年後の話だ。

 

 

「俺のやり方が間違ってたんだろ? そう言ってくれよ、先生」

 

 支援B、第二部になってようやく解禁されるこの支援では、カスパル支援Cの時の事件で思い悩んでいたと先生に告白してくれる。偶然にも主人公はこの時、五年前の例の怪しい人間、不審者が体に入れていたのと揃いの刺繍を入れた盗賊が行軍中の自軍の騎士達を襲撃、騎士の中に死傷者が出てしまったという報告を受ける。「五年前に俺が大人しく先生の指示に従っていれば、この盗賊集団はその時に潰すことができていた」、今回の犠牲は自分のせいだとカスパルは言う。上記の台詞はこの支援の最後の最後の言葉である、支援Bはこのように非常にビターな引きを見せる。

 カスパル自分が間違っていたかもしれないと考えるようになったのは、戦場に出るようになったからだという。明確な成長の形がここにはある。選択肢によっては、主人公は「あの時カスパルが飛び出さなければ、子供に危険が及んでいたかもしれない」と言う、どちらにせよやはり主人公はカスパルを庇うのだが、カスパルは「気休めはいい」「子供たちに危険が及んでいたかはわからないが、騎士が死んだのは事実だ」と言って上記の台詞につながるのだ。五年前のカスパルには盗賊を泳がせるという発想が無かった、その点で「そちらの方が正しかったかもしれない」と考えられるようになることは確実に良い成長だと言える。だがカスパルはここで「俺が間違っていたと言ってくれ」と先生に頼むのは、逆に言えば「自分では自分が間違っていたと認められない」ことの証である。今でもカスパル子供を見捨てるような選択肢は正解だと認めたくないと思っているのだ。同時に、そのような考え方をしていてはダメだとも思っている。だからカスパルは、他でもない先生に自分の考えを否定してほしいのだ。

 支援Bで、結局先生はカスパルを否定しなかった。故にカスパルは、自分でこの問題に決着をつけなければならない。彼はどのような答えを出したのか、二人の物語はいよいよ支援Aに移る。

 

 

「もしあの怪しい男が子供たちを傷つけていたら......オレ、一生悔やんでも悔やみきれねえ」

 

 支援A。五年の成長を経て、悩みに悩んで彼が出した結論は、「やっぱり自分を裏切れない」。カスパルの根っこ、彼の正義は学生時代の頃にしっかり完成していたことが示される場面だ。自分を叱った騎士や自分を止めた先生の行動が理に適っていると分かってなお、自分の正義を曲げない。その為に失った仲間をも割り切って、カスパルは正に己の正義を確立したのだ。

 しかしカスパルは成長に伴って己の決断に責任が伴うことを理解している。故に、

 

「こんな危ねえ奴、軍に入れられねえよな。だからオレ、出てって......」

 

 軍を出る覚悟を固めていた。自身の正義を追及して、軍規を守れないかもしれない、味方に被害を出すかもしれない、だから自分は出て行かなければならない。カスパル自分の中で「正義を貫く=軍を出る」と認識していた。そしてここで「先生とずっと一緒に戦っていきたい」とも語っている。ここをおさえると支援Bで彼が主人公に自分を否定してほしかった理由も見えてくる。「先生がオレを否定してくれたら、オレは先生に従って一緒に戦っていける」。

 支援Bの段階では、カスパルは恐らく自身の正義よりも主人公と共に戦うことを望んでいたのだ。勿論そんな簡単な二元論ではない、自分が間違っているのなら、間違ったその認識が正義であるとは言い切れないだろうし、カトリーヌとの支援を通っていれば「先生こそが自分の正義だ」と見ることもできただろう。要は当時のカスパルにとって「先生と一緒に戦っていくには、先生にオレの正義を否定してもらうことが必要」だったのだ。

 結局主人公は「それで構わない」「それを使いこなすのも自分の務め」と、さも当然の様にカスパルの正義を受け入れカスパル生き方を認めてくれる。あまりに悩んでいた分、そのあっさりとした解決にカスパルはひどく気が抜けるのだが、なんにせよこの後もカスパルは主人公と共に戦えることとなってハッピーエンド、というお話でした。

 

 

 この先、ベレト先生解禁禁止の支援Sのお話。

 

「オレからも、言わせてくれ。結婚しよう」

 

 キャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 ドストレートなプロポーズが堪りませんな!!

 しかしカスレスの支援S、結婚を先に申し込むのはベレス先生の方である。大体の支援Sがそうである気もする。

 

 真面目に解説しよう。

 カスパルとの未来を望んだベレス先生は、全てが終わってから女神の塔でカスパルを見つける。カスパルがどうしてこの場にいたのかは分からないが、ともかくこの時の彼が暇なことが分かる。「なんでここにいんだよ!」とカスパルから問われ、「カスパルから目が離せなくて」というあまーーーーーーーーい選択肢を選ぶとカスパルは「別にいつもやらかしてるわけじゃねえって」と甘くない返答。うーーーーん......

 その後「さてはオレに会いに来たんだろ」とあまーーーーーーーーい俺様系の台詞がカスパルから飛び出すのだが、その後彼が続けるのは「何だ? 鍛錬か? それなら訓練場に......」うーーーーーーん......

 

 ベレス先生も業を煮やしたのかもしれない。ここで唐突に「結婚しよう」と告げるのだ。注目のカスパルの反応は「おう......」とだけ呟いて暫く沈黙が場に流れるのだが、その後しっかりと、もの凄く喜んでくれる。意味をはき違えることもない、明確な好意も示してくれる、正直プロポーズ以後のカスパルの台詞はとても、とても悪くない

 最後はカスパルらしく、しっかりとオチがついて笑顔のままに終わる支援S会話、後日談でも賑やかな様子が伝わってくる。ベレスが王になろうが大司教になろうが連れまわして振り回すというのだから相変わらずである

 さてこの支援Sの要注目ポイントをもう少し掘っていきたい。

 

「あんたとこういうふうになったらいいなとか思うことはあったが......」

 

 カスパルはベレスとこういう風になったらいいと思っていたことがあった!!

 衝撃スクープである。思えば昨日ドロテアとの支援会話に触れた際、「恋愛観の核心に迫ってくれる」と書いたが、肝心の核心がなんなのかあまり書かなかった気がする。

 はじめこの支援Sを見た時、自分の中ではある違和感があったのだ。「カスパルの性格なら、好きになったら好きと潔く告白するのでは?」と。しかしカスパルはベレスと男女の中になりたいと思いながらもその心を秘めていた。システム上の都合かもしれないとも思った。「考えたこともなかった」「考えるまでもない」というセリフは、もしかしたら「自分では彼女の夫にはなれない」という意味であったのかもしれない。

 これ、カスパル、恋愛に関してはヘタレ気味なんじゃない!?

 ドロテア相手にもそういう節があると昨日書いた、それ以上にこの支援Sの描写は明確なんじゃないかと思う。支援Aではカスパル勝手に先生と共に戦う道を諦めてしまっている、やはり彼にはどうにも諦め癖があるのだ。彼が諦めるのは努力でどうにもならない事柄、この支援Sにおいては、自分ではどうにもならない程に大きくなってしまった、皆にとって大切なベレスの存在を思っての諦めだったのだろうか?

 支援Sを迎えるルートではカスパルにとっての初恋がベレスであってもおかしくない。恋愛に単に不慣れで不器用な、カスパルのそういった側面が彼を控えめにさせるのだとしたらそれはそれでとても愛おしい。ああ、今日も推しが愛おしい。

 

「オレは、あん時に誓ったんだ。心の中でな。この2本の腕で一生、あんたのこと、守って見せるって」

 

 あん時というのは、支援Aでベレスがカスパルの生き方を認めた時カスパルはこの瞬間に恋に落ちたのだろうか、カスパルの方は告白する気はなかったようなので、単に恋愛感情ではなくどういう形であっても一生守っていくという意味だったのかもしれない。支援Aを経て支援Sを迎えない場合カスパルは一人で、ないし相棒を連れて世界中を旅してしまったりすることもあるのでこの発言はどうにも怪しいが、まあ尊い事には違いないので細かいことはどうでもいい。なんなら「世界中のどこにいても、アンタが困ったときは俺が守る」というのもそれはそれでエモい

 

 

 結局、カスパルにとっても主人公が大切な存在であることには違いが無いのだカスパルは主人公との支援を経て大きく成長を見せるし、カスパルの自己をしっかりと確立していく。恋愛的好意をカスパルが示すシーンはベレスとの支援Sをおいて他にはかけらもない(強いて言うなら、シャミア支援のカスパルの台詞はそう見れなくもないものもあるし、それより要素では劣るがドロテア、カトリーヌとの支援でもそう見れなくもないシーンがある)のでそういう意味でもカスパルと主人公との絡みは非常に貴重。全編通してカスパルにとって頼れる存在として描かれていたベレスが支援Sで色々と砕けるシーンはとても可愛いので、皆さんも是非一度カスパルと主人公の支援、及びカスレス支援Sを見てほしい。

 

おまけ......カスパルと悩み

 

 カスパルは非常に悩みがなさそうなキャラクターである。しかし主人公との支援の他にも、父の参加したかつての戦いの影響など悩みの一発一発がデカいので案外悩んでるシーンは多いのだ。軽い物では身長について悩んでいる描写もあったりするが、やはり「悩んでいても仕方がねぇ」というスタンスであるのは確か。アネットとの支援ではカスパルの方がアネットの悩みを解決する側に回るのだが......結果アネットがたどり着くのは「悩んでるのが馬鹿らしくなってきた」。カスパルらしさが全面に表れた場面である。

カスパルは鋭い?彼の恋愛観を探る三つの支援会話

 ファイアーエムブレムシリーズとは、古来より登場人物同士の関係性も魅力的なタイトルである。とりわけ自ユニット同士の恋愛模様は目玉といっても過言ではなく、作品によってはその子供が登場することも。風花雪月では子世代の登場こそないものの、仲間同士の関係性が掘られる支援会話がフルボイスとなり内容も非常に重厚、多くのプレイヤーをあらゆる沼に叩き落したことと思われる。後日談では結婚したことが明かされる組み合わせも多い、それはカスパルとて例外ではない。しかしカスパル、どうにも恋愛とは縁遠そうな性格をしているキャラクターである。

 そこで今回のテーマはこちら。

 

カスパルと「恋愛」について語りたい

 

 テーマの性質上、今回の記事はカスパル複数の女性キャラとのCPに触れる内容となっているので、そこんところ注意していただきたい。

 

 カスパルは明るくフレンドリーな性格で恐らく友達も多い方と推測される。紋章を持たない次男である彼に家柄目的の接触があるかは分からないが、とりあえず貴族でもある。では彼は異性から好かれるタイプの男子であるのか?

 この疑問をある程度解決してくれるイベントが、第一部終盤の女神の塔イベントである。知らない人に向けて軽く説明すると、特定の日に女神の塔で男女が二人で何かを約束すれば、女神様がそれを叶えてくれる......という噂を知った主人公が、その日に生徒の誰かと女神の塔で二人きりになるというイベントだ。

 

「昨日の夜さ、あんま仲良くない女の子に、急に話しかけられたんだよ。明日、舞踏会を抜け出して、女神の塔に行かない?って」

 

 女神の塔イベントでは、カスパルがあまり良く知らない女子から女神の塔に誘われたことを明かしてくれる。明確なモテ描写である。わざわざこの描写を入れたという事は、カスパルは異性からモテるキャラとしてデザインされているのだろうと推測できる。

 

「飯食ったり踊ったりで忙しいから興味ないっつったら、怒ってどっか行っちまうしよ」

 

 そして直後に手ひどくフラグをへし折った描写が入れられている。これでは多少モテたところでその先には繋がらない。主人公ベレスをもってして「酷い話だ」「流石にかわいそう」と同情するレベルである。女神の塔のロマンスを理解しているベレス先生は可愛い。おまけにカスパルはそのベレスの言葉を「不条理に怒られた自分に対するフォロー」と捉えてさえいる。怖い

 カスパルは女神の塔の噂を知らない、おまけに自分に向けられた好意に対して気づけない節があるということが分かる。この「自分に対する恋慕に鈍感」という特徴は、彼の支援会話でもいくつか確認できる。

 

「不束者ですが、よろしくお願いします!」

「なんだよ、その挨拶! がっはっは!」

 

 カスパル・ベルナデッタの支援A、その最終盤の台詞。この支援では「すんげえ景色」もとい素敵な夕焼けの場所がキーポイントとなっており、支援Cでひょんなことから拉致二人でその場所を訪れたことから物語は始まる。支援Bでも同じ場所を二人で訪れるのだが、そのどちらもカスパルの連れて行き方が雑だったために、支援Aでは遂にベルナデッタが怒ってしまうという展開だ。カスパル彼女の怒りの訳を理解できないし、故に言われて初めて気が付きガチ反省、「お詫びになんでもする」と口走る。それに対しベルナデッタは「もう一度、今度は優しく連れて行ってほしい」と求め、加えて「あの景色の場所へ連れて行くのは自分だけにしてほしい」と言う。カスパルその訳も理解できない。そしてカスパルはベルナデッタの生粋の引きこもりっぷりに呆れて「色んなところに、お前だけを、優しく連れて行く」と約束をするのだ。自分が言った言葉がベルナデッタにどう聞こえるのかを理解していない。結果ベルナデッタは上記の台詞を言う。その返しの台詞を見ればもうお分かりだろう、カスパルやはりその言葉の意味を理解していないのだ。お前ってやつは、ほんと......

 この後明らかにすれ違いが発生するであろうこの支援Aを経て、カスパルとベルナデッタには無事結婚する未来が用意されている。おまけに子だくさんであったことも後日談で示唆されているのだが、どうやってその未来にたどり着いたのか、ベルナデッタの苦労を思えば涙が出てくるほどである。

 

 

「あたしの部屋まで来てほしいなー。一人じゃできないこと、したいかなって......ダメ?」

「部屋? いいけど、何だ? 模様替えか? 引っ越しか?」

 

 カスパルヒルダの支援Aより、これまた終盤のやり取り。見るからにフラグをぶっ壊している。なんだこれは、鈍感系主人公ムーブか。この直後ヒルダはしっかり「やっぱり気づかないよね、ずるいなー」と苦言を零していることから、ここでのカスパルの行動によっては明らかにカップル成立であったはず。結局ヒルダは「荷物を運んでほしい」と茶を濁すような頼みごとをし、カスパルがそれを受けるという形で支援会話は終了する。ヒルダとの支援会話では、彼女の性格もあって自身の好意を匂わせるような発言を何度もカスパルにぶつけるのだが、カスパルの方は「惚れちゃいそう」という攻撃力の高い言葉も普通に流してしまっている。一方でカスパルヒルダの、咎められがちな性格を全面的に肯定し、無意識ながらもはや口説いていると言ってもいい。お前ってやつはほんと......

 

 これまでの内容から、カスパルがやはり鈍感で恋愛には興味がない、そもそも理解していないのではないかということが分かる。しかし、彼を「鈍感」の一言で片づけるには少々不都合な描写が多数あるのだ。

 例えばエーデルガルトとの支援では、彼女の表情に違和感を抱き、そのことを告げるとエーデルガルトから「鈍いように見えて妙なところで鋭い」と言われている。この「妙なところで鋭い」がまた、カスパルの本質をついているようなのである。なんなんだこの帝国陛下は、カスパルの事を完全に理解している。

 今回のタイトルに掲げた、カスパルの恋愛観を探る三つの支援会話、そのうちの一つであるベルナデッタ支援からは彼の鈍感さしか窺うことはできないが、残りの二つではエーデルガルトが言うような鋭さを正に見ることができるのだ。

 

 

「お前って、よく人にお願いしたり甘えたりするじゃねぇか。けど、オレにはしねえのは、何でかと思ってよ」

 

 これはヒルダとの支援A、さっきとは打って変わってその冒頭近くの台詞である。これに対してヒルダは「カスパルくんって意外にそういうとこ目ざとい」と話している。

 ヒルダの他の人に対する態度と自分に対する態度の違いに気づいて、それを疑問に思っている。これは普段からヒルダのことをよく見ていなければ出てこない発想である。素直に捉えるなら、彼の鋭さを描写する場面。一方でその訳には思い至っていない、「なんでだ?」で止まっている為、気づけはしても解決はできないという事を示している。

 ヒルダがカスパルに甘えない訳は、その後ヒルダが自ら話してくれている。カスパルのことを縛りたくない、という理由が一つ、もう一つは「自分がそれとなく甘えてもカスパルは気づいてくれないから」。直接頼むのではなく、少し濁して相手自らの意思で助けてもらうのがヒルダの理想なのに、カスパルはそのヒルダのサインに気づけない。だからカスパルには甘えない。しかしカスパルが、自分が他の人に甘えていたことに気づけるのを「永遠の謎」としている。

 

 

「最近気づいたんだけど、お前ってオレにだけ妙に気安くないか?」

 

 一度ヒルダから離れて、三つの支援会話の最後の一つについて触れてみよう。

 こちらはカスパル・ドロテアの支援Bの冒頭。ドロテアは自分にだけ部屋の掃除等の面倒ごとを頼んでくるし、自分には上目遣いや腕を絡めるなどのスキンシップをしてこない、と他の男子と自分の扱いの差について疑問に思いそれをぶつけている。上目遣いは身長的にも無理だろドロテアはそれに対して「意外とよく観察している」と述べている。カスパルは他にも支援Cではドロテアがいつも男と出掛けているところを見ているような発言をしているし、支援Aではドロテアが最近男と出掛けなくなったことを認識して「遂に飽きた」と述べている。なるほど確かによく観察している。

 

 ヒルダにしろ、ドロテアにしろ、カスパル自分と他人との扱いの差に気づいて疑問に思い、その理由には思い至らず本人に直接聞いている。不満に思っての詰問であるとは明確に描写されていない、彼の性格を思えばその可能性は薄くも思えるが、他者と自分との扱いの差に敏感な性質だという可能性はある。カスパル自身は人の目を気にせず自由に生きていたいタイプの人間ではあると思う。しかし前回書いたように「仲間の役にたちたい」といった願望も大きなタイプでありそうだし、貴族の次男であること、何も残らない身であることから人から必要とされたい欲は高いのかもしれない。故にヒルダが自分を頼らないことに不満を持っていてもおかしくない。ドロテアの頼み自体は支援Cの段階で快く引き受けているし、矛盾もないように思う。最も、カスパル本人にドロテアから上目遣いで見られたいだとか、腕を絡めてもらいたいといった願望があるかと聞かれると、限りなくなさそうではあるが。

 別に疑問はただの疑問、何も考えずに聞いただけ、というのが真相だとしても、それはそれでいいのである。なんなら一番カスパルらしいとも思う。推しについて色々考えるのは楽しい。はい次。

 

 

ドロテア支援の破壊力

 

 ベルナデッタ支援ではカスパルらしい鈍感さしか見えない、ヒルダ支援では意外と鋭い一面を見せつつも最後はお約束のようなフラグの折りっぷりをみせる。いずれのCPでも後日談では結婚にたどり着くものの、その過程はまるで見えない、謎に包まれたカスパルの恋愛観。その核心に一番迫ってくれるのは、やはりドロテア支援だと思う。

 上記の通りこの支援では、カスパルがやたらドロテアを観察している描写があるが、一方でカスパルからドロテアへ積極的な好意を示すような場面はない。支援Bで「私に気があるのかしら?」と冗談で聞かれても一切焦らず「はあ? それはねえよ!」と笑って返せる程度には恋愛的好意を覗かせない。その後ドロテアに「弟のようなもの」と言われたことから始まる一連のくだりはそれはそれで破壊力が凄い、必見物であるが、今回語りたいのは、やはり支援Aである。

 

「本当は......私、貴方となら結婚......」

「わあああああ! 待った! 待ってくれ! ちょっと待て! 心の準備をさせてくれ! 頼む!」

 

 やはり支援Aである。

 ドロテアが「結婚」という単語をだしてカスパルを盛大にからかうのがこの支援Aの見どころ。流石のカスパルもこの言葉には盛大に焦る。盛大に焦るのだ。なんだ心の準備って、準備が出来たらどうするつもりだったんだ。はいだったのか、はいと答えるつもりだったのか。

 結果ドロテアは「結婚とか意識せず仲良くできそう」と、冗談としてこの言葉を無かったことにしてしまうが、この時のカスパルの気の抜けたとも、がっかりしたともとれる反応が堪らん更に「そういうところから始まる二人というのもある」「ずっと互いに独り身なら、一緒に居るのも悪くない」と続けられ。嫌が応にもドロテアとの将来を考えざるを得なくなる。「俺は色恋に興味はない」と地味に本人の口から語られるのもこの支援で、そういう(ドロテアと一緒になる)こともあるかもしれない、とその可能性を認める発言までしてしまう。一方でカスパルは「ドロテアがこの先一生一人なわけがない」「今考えても仕方ない」と思考を打ち切ってしまい、そこでこの支援は終わるのだが......

 支援Bで弟扱いされて気に食わないと感じる事、頻繁に彼女とのお茶に付き合っている様子、結婚という言葉に対する反応とそれが冗談だった時の反応、いずれも絶対とは言えないがカスパルがドロテアを異性として好ましく見ている」と見れなくもない描写がなかなかに多い。その前提で考えると「ドロテアがこの先一生一人なわけがない」というカスパルの考えは、ある種の諦めのようにも思えるのだ。ドロテアはかつて自身の将来の為にと家柄のいい男性と何度もお出かけを繰り返していた、カスパルはドロテアの求める物を持っている立場ではない、そこから来る諦め......

 なんにせよ、カスパルを思いっきり恥ずかしがらせるのも、カスパルをここまで焦らせるのも、ドロテアを置いて他にできる者は少ない。ドロテア支援でしか見られないカスパルというものは非常に多い。ドロテアはある意味カスパルカップTier 1であるなんだカスパルカップってそんな二人の後日談は紅花、それ以外の2パターンいずれも結婚を名言するものではない。時折カスパルがドロテアの元を訪れ、ドロテアが歌姫の座を退いてからは二人で共に過ごしたかもしれない......恐らく、支援会話の通り一緒になるにしても若いうちの話ではなかったのだろう。賑やかな話の多いカスパルのエピローグの中で、淡さを感じさせるドロテアとの後日談はこれまた名文だと思う。

 

 

 さて、今回はベルナデッタ、ヒルダ、ドロテアの支援を中心にカスパルの恋愛観及びカスパルの鈍感さと妙な鋭さについて語ってきたが、恋愛観という意味ではどうしても外せない、外せるわけがない人物がもう一人いる。それは勿論、ベレスである。

 ベレス、もとい主人公は前回更新の「諦め」のテーマにおいても外せない人物であるのだが、前回も今回もカスパルと主人公の関係についてはほとんど触れなかった。

 次回では「諦め」「恋愛」のテーマを補足しつつ、カスパルと主人公の支援会話や関係について語りたいと思う。

 

 最後になるが、カスベル、カスヒル、カスドロ、勿論他のCPだって。そのどれも全てが尊いぞ!!

カスパルは諦めの人である

「単純に努力が好きで、強くなることが好きで、そして諦める事を知らない」

 

 これはカスパル・エーデルガルト支援Aより、エーデルガルトがカスパルに直接話した彼の人物像である。昨日ダラダラとカスパルについて語ってはみたが、思えば彼の主たるエーデルガルトのこの言葉にこそカスパル=フォン=ベルグリーズの本質が詰まっているような気もする。誰よりも純粋で、誰よりも強さに貪欲な男、それがカスパルなのである。

 

 さて、カスパルという人物の在り方を再認識したところで、本日のテーマはこちら。

 

カスパルは諦めの人である

 

 早速の矛盾である。エーデルガルトに喧嘩を売っているとしか思えない。しかし私が思うに、カスパルというキャラクターのテーマの一つに「諦め」というものが確かにあるのだ。まずは私がそう思うに至った原作のカスパルの台詞の数々を紹介したい。

 

 

「一方だけを殴るってのは、俺はちょっとやだなあ」

「でも、そうは問屋が卸さねぇってのは分かってるぜ」

 

 第一部五章、「黒風の塔」探索会話での台詞、主人公の学級が英雄の遺産を盗んだマイクランを討伐することを命じられた章でのカスパルの台詞だ。今度の件を「親子喧嘩の様な物」と認識し、どちらか一方を外から叩くのは嫌だ、という彼の正義観が表れる場面である。選択肢によっては「(どちらが一方が悪くても嫌なのかと問われ)悪いかどうかは俺が決めてぇ!」と、話を聞いただけでどちらか一方を悪と決めつけない姿勢も見られるが、だからといって自分一人の意思でどうにかできる問題ではない、という事実を理解している様子が描かれているのだ。そうは問屋が卸さないという言葉を知っているのとても偉い。

 

「おーい、急に話がデカくなったな…...まあでもそう簡単に変わらねえだろ?」

 

 エーデルガルトとの支援会話Bより、エーデルガルトが現在の貴族制度を痛烈に批判した場面でのカスパルの台詞である。この支援会話でエーデルガルトはカスパルの兄に対しても苦言を呈し、カスパルも自身の兄の「努力もしない、強欲、自分が家を継ぐことを信じて疑わない」といった側面を認めているが、そのうえで過去の出来事から兄の性格を「しかたない」と受け入れている。自身の家のことも、世界を取り巻く貴族の風習も、「仕方ない」。それがカスパルの考え方だ。反対にエーデルガルトはカスパルが諦めてしまう、途方もない世界の理をひっくり返そうと本気で考え、後にそれを実行に移す。その時にカスパルが彼女についていくのか、敵対するのかはプレイヤーの選択次第である。

 

「オレが死ぬのは、オレが弱かったせい。だから、気にすんなよ......」

「気にすんな、負けたら死ぬ......そういう喧嘩だろ......」

 

 いずれもカスパルの死亡台詞。上が自ユニット時、下が敵対峙。こう書き起こすだけでも胸が痛い。

 台詞のニュアンス自体はどちらも同じ、「オレが死んでもお前が気にすることはねぇ」である。今際の際に生への執着も未練も一切見せやしない。きっと「自身の死に場所は戦場である」という覚悟が決まっているのだろう。そもそもカスパルは瀕死時の台詞からして非常に危うい。二部では「ギリギリまで戦って、少しでも勝利に」と退くことを考えやしないし、一部に至っては「あぶねぇぁ......いや、まだいける」と引き際を分かってさえいないような言葉を吐く。同じ学級のリンハルトやベルナデッタは同条件で撤退を切に求めるし、ペトラは活動限界、フェルディナントは追い込まれていると認識、ヒューベルトに至っては死を覚悟する局面でのカスパルの台詞が「まだいける」。いけるか馬鹿、退けカスパル

 

あいつだって、わかってるさ!わかって、戦争を始めたんだ!」

 

 銀雪の章、19章「交差の結末」での台詞。遂にエーデルガルトと戦うことになる場面で、カスパルの台詞の中でもかなり熱の籠った、切実な叫びである。カスパルは軍人の息子だけあって旧友を討つことに抵抗を見せる場面は少ない。叔父のランドルフとの敵対も「そこまで思い入れはない」とだけあってあっさりしたものである。エーデルガルトに対しても「今ならあいつをぶったおせる気がする」など物騒な発言が見られたりもしたが、いざ交戦となるとやはり思うところがない訳ではないらしい。彼女と同じ道を辿らなかったカスパルの、彼女の決断に対するやりきれなさを感じられる場面だ。

 

 

 以上のように、カスパルの発言には、彼のイメージとは裏腹に「仕方がない」といった諦めのニュアンスの入った言葉が多く見られる。こういったカスパルの価値観はやはり彼の生まれ育った環境に起因するのだろう。

 繰り返しになるが、カスパルベルグリーズ家の次男、家の相続権を持たない貴族である。紋章も無く、生まれながらにして家の相続、安定した未来を諦めざるを得なかった身。成長して以降本人はそのことを苦に思いはしないが、本人もエーデルガルトとの支援で「もしかしたら最初は違ったのかもしれねぇ」と語っている。

 そして次男であること以上に彼に強くのしかかるのは、誰よりも絶対的な父の存在。カスパルは本編中にもあらゆる場面で「親父とは戦いたくない」と述べている。ある程度彼が成長し、言動も大人びてきた第二部においてでもだ。その理由が「親子の絆とかなしに、純粋に恐ろしい」「魔物の方がまだいい」といったもの。絶対的に敵わないという、カスパルの諦めの側面が全面に出ているのがこの父の存在なのだ。

 武で生きていくと決めたカスパルには、どうしたって敵わない父の存在が常につき纏った。仕方がないこともあるという価値観はこういった環境から産まれたものではないかと私は想像する。最も、努力が好きでそれを続ける根性もあるカスパルが一切の諦めを知らなければ、無限に努力を繰り返し無謀な挑戦を繰り返し、きっとどこかで破綻していたと予想できるので、結果的にはそれでよかったのだとも思うが。

 

 

カスパルは諦めない人である

 

 ここまでの文で「なるほど、確かにカスパルは諦めの人間なのだ」と同意していただけたかは分からないが、何はともあれカスパルと諦めは密接な関係があるというのが私の主張だ。なら、頭のエーデルガルトの「諦める事を知らない」というカスパル評は間違いなのか。

 

 断じてそんなことはない。

 

 矛盾である。皇帝に媚びを売っている。だがしかし、やはりカスパルというのは諦めを知らない人間なのだ。

 ここまでの主張を全く矛盾なく押し通すとするならば、「カスパルの諦めは全て無意識のものであるのだから、カスパルが諦めを知らないというのもまた是である」とでもすればいい。全くない話ではなさそうであるが、別にそれに関してはどちらでもいいのだ。多少の諦めは知っていてもいい、カスパルという男はそれ以上に「諦めない」を体現する男なのである。

 

 例えばカスパルは、次男で何も残らないという身でありながら、自分の身をたてるということを諦めない。そのための努力を際限なく続ける人であるというのは周知の事実だろう。リンハルトとの支援では自身より背の高い相手に数度と負かされたカスパルがそれでも諦めず、自身に不向きな策をも身に着けて遂には打倒するその様が描かれている。先述の戦闘時の台詞でもそうだ。第二部においてカスパルは、瀕死状態になってもなお戦闘を続行することを望む。「オレが強くなりゃ、皆も楽になる」(二部レベルアップ台詞)など、二部のカスパルは仲間の為の活躍にこだわる台詞が見られ、前述の瀕死時台詞は「自身の生へのある種での諦め」と「仲間と共に勝利することへの執着」が混じった台詞と見れる。

 諦めることと、諦めないこと。そのどちらもがカスパルを語る上で欠かせない事。時には一つの台詞一つの場面にその両方をのぞかせながら......そういったことを意識して、カスパルは描かれているのだと、私はそう思うのだ。

 

 

おまけ・・・幼馴染との対比

 

 カスパルを語る上で欠かせないキャラクターがいる。リンハルト=フォン=ヘヴリング。黒鷲の学級の一員でカスパル幼馴染だ。上記にも彼との支援会話に少し触れたが、彼については後々より深く振れる機会もあるだろう。本日は、今回のテーマ「諦め」と絡めて、カスパルとリンハルトの対比について少し語りたい。

 

 何を隠そうリンハルトは「諦めの悪いキャラ」として意識的に描写されているのである。嘘、あんなに怠惰な風なのに!? と思った方もいらっしゃるかもしれない。ただ、リンハルト最推しといった方にとっては反対に「どうしてそんな当たり前のことをわざわざ言うのか」と思われているかもしれない。まあまあ、とにかく聞いてほしい。

 

 銀雪の章でいざエーデルガルトと戦うという場面、カスパルは切なる思いを滲ませながら「あいつだってわかってるはずだ」と叫ぶ。その後、リンハルトはいつもの豹々とした雰囲気で「ま、級友の誼だし......無駄になってももう一度くらい説得してもいいですけど」と口にする。リンハルトもまた、紅花の章では「学友に思うところはない」と口にするなど、とにかくマイペースな男であり、更にめんどくさがりとして描写されている男であるが、そのリンハルトがエーデルガルトに対し「説得してもいい」というのである。激情と共に討つ覚悟を叫ぶカスパルと、ただ彼らしくエーデルガルトを討たずに済むならそれが一番いいと話すリンハルト。ああ、美しき対比である。

 好きな物にはとにかくまっすぐなリンハルトは、紋章や特殊な能力を持つ複数のキャラとの後日談で、幾年の時を経て彼女らが持つ問題を解決したと書かれている。リシテアとの後日談では明確に「(リシテアの紋章の問題について)諦めるつもりのない」と書かれ、コーデリア家にまで押しかけている。リンハルトが諦めの悪い男であるということは間違いないだろう。

 カスパルとリンハルトの支援会話Aで、カスパルはリンハルトに「互いの正義がぶつかっても俺たちは争わない」という約束を持ちかける。それに対しリンハルトが返すのは「共に生き残るという約束ならしてもいい」。カスパルが求めるのが争わない、共に戦うということであるのに対し、リンハルトが求めるのは「生きること」。例えば死地の中で二人息が絶えそうな窮地に、相方の背中を力強く押し奮い立たせるのはリンハルトの側なのかもしれない、などと思ったりするのである。

カスパル=フォン=ベルグリーズという男

 2019年7月26日、約30年続くファイアーエムブレムシリーズの最新作としてファイアーエムブレム 風花雪月」が発売された。本作ではプレイヤー=主人公は教師となり、主人公が導くべき存在として多数の生徒が登場する。複数の章からなる本作において、各章のもう一人の主人公と呼ぶべき級長三人のほかにも、各々個性の際立った魅力的な生徒たちがいるが、そのうちの一人にカスパル=フォン=ベルグリーズという男がいる。

 エーデルガルトが級長を務める黒鷲の学級の一員であり、アドラステア帝国の軍務卿であるベルグリーズ伯爵の次男。身長は159㎝と小柄で、黒鷲・青獅子・金鹿・灰狼の学級まで含めた全ての生徒たちの中でも男子としては最も小柄。喧嘩っ早いと称される性格で人の話をあまり聞かない、性能面においても初期値が低く序盤は使いづらさが目立つとの声も。欠点が目立ち、決して万人受けするキャラクターではないのだろう、ユーザーからの人気という面で今一つ伸び悩んでいるという印象を受けることは少なくない。公式からの扱いについても、スマブラでの背景やスピリッツでの出演を逃し、アビスモード実装におけるアップデートにおいてもアビスメンバー選抜は愚か新規の支援会話実装も無く、FEシリーズオールスターが出演するスマートフォン向けアプリファイアーエムブレム ヒーローズ」には未だに実装されていない。風花雪月発売以後公式からの供給は皆無といって過言ではないという、少々不遇と言える位置のキャラクター。

 

 しかし私はこのカスパル=フォン=ベルグリーズに心をがっちりと掴まれてしまったのである。無論それは自分だけではないのだろう、今年先述のヒーローズの企画として行われた「第五回英雄総選挙」(全シリーズのほぼ全てのキャラクターが投票対象の人気投票)では2535票(一人辺り最大7票まで投票可能のルール)を集め43位、男性部門では19位に輝いた。昨年行われた第4回では59位、男性部門で24位であったことから彼に心を掴まれた「先生」が相当数いること、彼の公式からの新たな供給を心待ちにしているシリーズファンが相当数いることが分かる。

 風花雪月のキャラクター達は多くが一見するだけでは分からない、彼らと接することで初めて分かる魅力を持っている。カスパルも勿論そのうちの一人、本ブログでは私ポン酢の運命の推しことカスパル=フォン=ベルグリーズの魅力について、数度にわたって書き残していきたいと思っている。ある意味では推しがどういうキャラクターであるかを再確認するという、自分の為の行い、だがしかし、本ブログを読んでカスパルに興味が湧いた、カスパルのことが好きになった、カスパルの沼に落ちた、カスパルになったという方が現れたならカスパル推しとしてこの上ない幸せである。なお風花雪月のネタバレはどんどん出てくるので、未プレイの方は注意していただきたい。

 

 

カスパル=フォン=ベルグリーズってどんな人?

 

 第一回となる今回は、カスパル=フォン=ベルグリーズがどのようなキャラクターであるかを、主に彼の長所を中心に軽く、かるーく紹介していきたいと思う。

 カスパル=フォン=ベルグリーズは先述の通り、アドラステア帝国軍務卿ベルグリーズ伯爵家の次男坊、所謂帝国貴族というやつである。だが本作における貴族の生徒の中では一二を争うほどに貴族らしくない生徒であり、基本的に敬語は使わない(使えない?)し紋章もない、家の継承権もないというナイナイ尽くしである。恐らくこの継承権を持たない次男であるということが彼のキャラクター造形の根幹にあり、努力や鍛錬が好きであるという彼の最大の長所はこの「体一つで身をたてなければならない」という境遇に由来するのだろう。

 

「俺は貴族とはいえ次男だし、武勲を得なきゃ将来何にもなれないかもしれん。だから戦場で活躍できるように、毎日欠かさず訓練してる」(カスパル・ドロテアの支援会話Cより。自分の置かれた境遇を理解し、前向きに打開しようと生きてきた彼の強さが表れている)

「オレの未来はオレが切り拓く。何にも継がねえことのどこに苦しみがある?」(カスパル・エーデルガルトの支援会話Cより。そもそもこの時点で彼は自分の境遇を苦境と思っていないことが分かる。生来の気質故か、親の教育故か、いずれにせよこの点もまた彼の本作における貴族らしからぬ一面と言える)

 

 喧嘩っ早さも彼の設定として割と全面に出てくるものであるが、一方で本編の描写では「喧嘩っ早い」という言葉から連想されるような野蛮な描写はないと言ってもいい。彼の好きなものの一つが「喧嘩」であり、同時に「悪を成敗することが好き」「不正が嫌い」、何より正義を重要視する彼の性格もあって、彼の喧嘩は「強者との腕比べ」「悪を止めるための戦い」という側面が強い。逆上による喧嘩や弱い者苛めとは無縁であり、喧嘩を友達になるプロセスとして見ている節すらある。

 

「別に、オレから喧嘩おっ始めてるんじゃねぇよ。話も聞かねぇ、ぶっ飛ばさなきゃ止まらねえ奴らが多いんだ。だから、オレはこの拳で、そいつらの曲がった根性を叩き直してるんだよ」(カスパルヒルダの支援Cより。彼の喧嘩に対するスタイルが端的に語られているが、本当に自分からおっぱじめていないかという点に関しては、少々疑問である

 

 明るい性格であるのも彼の特徴の一つ。生徒たちの中でも非情にフレンドリーな部類にあたり、教師となる主人公にも初対面から気さくに話しかけてくれる。カスパルに用意されている他学級の生徒、アッシュ、アネット、ラファエル、ヒルダとのいずれの支援会話においても、Cの段階で既にある程度仲良くなっている状態から展開されており、顔の広さ、友達の多さも窺える。

 ある程度優しい方でもあるのだろうが、一方で戦場においては容赦がなさそうだ。軍務卿の息子だけあって、戦闘というものが身近な存在であったのだろう、生徒たちにとって初めての実戦になる第二章の盗賊討伐においては、多くの生徒が敵を討った事実を静かに受け止めたり、その事実に多かれ少なかれ動揺する中カスパルは本物の戦いに「意外と燃えるじゃねぇか!!」と興奮を加速させる。怖い。二部になると必殺を出した時のセリフで「その首寄越せ!」「死ぬ覚悟はあんだろ?」などと言う。怖い。戦場で戦果をあげて身をなしていく覚悟が早くからガン極まっている事、幼い頃からの父、及び戦場への憧れからこういった発言が飛び出すのだろう。

 

 他にも挙げていくとキリがないが、ひとまずカスパル=フォン=ベルグリーズを語る、知るにおいて欠かせない基本的な要素としては以下の様にまとめられる。

 

  • 継承権を持たない貴族の息子
  • 鍛錬と喧嘩が好きな武闘派
  • 明るく正義感の強い男

 

 喧嘩っ早さの誤解さえ念頭に置いておけば、あとは割と分かりやすい性格をしているキャラなのでとっつきやすい方だとは思う。とはいえカスパルはまだまだ深い魅力を持つキャラクターである。次回以降はもう少し彼の人物像を細かく、深く掘っていき、妄想考察も踏まえて語っていこうと思う。

 

 

おまけ‥‥‥ユニットとしてのカスパル

 

 私はFEシリーズの歴は浅い方であり、同時にゲームとしてのFEはあまり得意な方ではない。何が言いたいかと言うと、今まで累計6周プレイした風花雪月、そのすべてにおいて難易度はノーマルであったしカジュアルモードでのプレイだった。アビスモードも当然カジュアル、三つの選択肢から一つの正解を選んでクリアするマップで二連続で択を外しベレトとユーリスを除いて全員撤退した時は地獄を見た。

 故にカスパルのユニットとしての性能を語れる方ではない。ルナティックで運用するにはどうすればいいかなんて分かる訳もない。だが全く触れないのもどうかと思うので少しだけ語ってみる。

 

 性能においてもカスパルは非常に分かりやすい性質をしている。斧と格闘が得意、弓と理学、指揮が苦手で才能開花する技能は無し、とどことなく寂しさも感じる得意・苦手技能の割り振りをしているが、斧・格闘という二つの技能は極めればそのまま最上級職・ウォーマスターになれるので初めて彼を触るよ! という人はとりあえずこの二つを鍛えてやればよい。本人の希望もウォーマスター、ああ、分かりやすい。

 固有スキルは「喧嘩好き」、隣接している敵の回避を10下げる。斧や格闘は射程一であるので、特に意識することなくこの効果は活かされてくるだろう。分かりやすい。

 ステータスは先述のとおり、初期値自体は低めに分類されるらしい。これは経験談だが、確かに序盤のカスパルはあまり火力が伸びずに使いづらさを感じることもあった。成長率は力・技・速さが45%と高め、いずれもウォーマスターに要求される数値であるので本当に噛み合っている。自分から殴るときに攻撃力を上げる鬼神の一撃(中級職、ブリガンドを極めると得られるスキル)も無理なく取れる、実に、実に噛み合っている。

 要するにカスパルは、あらゆる面で正にウォーマスターとして使ってくださいと言わんばかりの性能をしている。初めてカスパルをメインで使っていくとなって悩んだなら想定通りの運用をすれば間違いないということである、実に優しい。

 火力は鬼神の一撃で補強しつつ、初めは使いづらさが目立っても次第に能力が追い付いてくるようになるので粘って使ってやろう。力の不足を解消してやれば、格闘は二回攻撃が可能な強力な武器なので非常に頼れる存在になる。守備が高い重装は特攻斧武器のハンマーで砕いてやろう。

 ちなみに魅力の成長率は25%、僕に言わせると100%だよ!!!